2023年シーズンを終えた鈴木誠也選手、8、9月に見せた快進撃の中で「落ちそうな瞬間」もありました。そこで持ちこたえることができた背景を綴ります。

2023シーズンの月別ヒット&ホームラン数(10月は2試合のみ)

タフな終盤でも好調を維持できた理由

 日本は日本シリーズの真っただ中ですが、アメリカではテキサス・レンジャーズがダイヤモンド・バックスを4勝1敗で破り、世界一となりました。

 残念ではありますが、僕のシーズンは約1カ月前に終わっていましたから、この日まで戦い続けた彼らに対して、羨ましい気持ちと本当にタフだな、という思いがあります。

 シカゴ・カブスに来て2年目は色々な思いを経験したシーズンでした。詳しくは来週配信予定の動画をぜひご覧いただければと思います。

 冒頭に「羨ましい気持ちに加え、タフだな」という表現をしましたが今回は、その理由、改めて感じたシーズン終盤の感覚を振り返りたいと思います。

 8月中旬からシーズン終了までの2カ月弱は僕にとって、手応えを感じさせてくれる時間でした。数字だけを見れば、(ここで以前も書いた)目標を達成するだけでなく、その目標をシーズン中に上方修正できました。 

 ただ、シーズン終盤は心身への負担がかなりありました。

 休みが少なく移動も多いメジャーリーグ。朝、起きると体中がギシギシと錆びついているような感覚で、筋肉が動かない。疲労からテンションも上ってこない、という日々が続きます。

 この時期までやっている選手を「タフ」と言ったのはそういう理由です。

 昨シーズンは体重も落ちてしまい、コンディション調整自体に難しさを感じていました。一方で今年は、同じような感覚はあったものの、終盤になって体が疲れていても数字を落とすことなく過ごせたのにはいくつかの理由があったと思います。

 ひとつは無理やり「体」を動かしたこと。

 例えば、コンディション調整の対処法として試合前の練習を極力少なくし、試合に余力を残す、という方法があります。かつて僕もそうやって試合に臨んでいたことがあったのですが、今シーズンの終盤は必ず、体を動かすようにしました。午前中に走り、ストレッチを入念にする。力を入れたトレーニングをする。できる限り、バットが振れる状態を作り上げ、打席へと向かったのです。

 もうひとつが...