内田篤人の著書『ウチダメンタル』が話題を呼んでいる。アスリートにおけるメンタルの強い人、弱い人はだれか? そんな問いに「その考え方はしっくりこない」と言った訳とは?

 

「誰がメンタル強く見えます?」への答え

 メンタルの上下、その抑揚(振れ幅)を抑える──簡単にいえば、それがウチダメンタルの根幹だ。それができる人って〝心の幹が太い〟んだろうと思う。

 メンタルはどうしても、「強い」「弱い」みたいな話が主流になる。僕も現役中によく聞かれた。どうやったら「メンタルが強くなれますか?」って。

 逆にメンタルが強く見えるのは誰ですか? って聞くと、決まって挙がるのが「本田圭佑さん」。「長谷部誠さん」とか「遠藤保仁さん」と言う人もいたかな。ちなみに、僕も強く見られているらしい。

 イメージとしては理解できるけど、あんまりしっくりこない。

 強弱でわけると、強い人が良くて、弱い人が悪い、みたいな感覚があるからだ。

 この説明もちょっとしっくりこないかな。強い人はポジティブ(強気)、弱い人はネガティブ(弱気)、でどうだろう。

本田圭佑はメンタルが強い?

 確かに、みんなのイメージのなかで「強い」人の代表格である本田さんは、ポジティブだ。超ポジティブ。本当にポジティブ(笑)。サッカーに対してはもちろんのこと、ビジネスや社会問題など、どんなことでも常に前向きで熱いし、それを発信する力がある。

 じゃあ、ハセ(長谷部誠)さんは? ヤット(遠藤保仁)さんは?

 確かにポジティブな面はあるけど、本田さんほど強気ではないし、何かを伝えようとするわけでもない。むしろ、冷静に淡々としている。

 全然、タイプが違うのに同じようにメンタルが強いと思われる。その共通点は、振れ幅の小ささにあると思う。

 いつもメンタルを一定の状態に保てる──よく医療系のテレビドラマで心電図がピーッとなって、まっすぐになると危篤状態になるよね? あのピーッとまっすぐ線が伸びているような状態にできる人は、メンタルが強いと思われる。

 じゃあ、本田さんとハセさん、ヤットさんでは何が違うかといえば、メンタルには「良い」「悪い」じゃない「上下」があって、イメージ的にいえば、本田さんは上部でメンタルを一定に保つことができて、ハセさんは真ん中で、ヤットさんは下部で保つことができる、というわけだ。

 これが僕のメンタルに対するイメージ。

 つまり、いわゆる世の中にあるメンタルが強い人・弱い人の行動は上下に対応していて、そこに良し悪し(一流とそうじゃない人の差とか、パフォーマンスのいい・悪い)は存在しない。繰り返しになるけれど、一般的なメンタルの強い・弱いは、ここに差を持たせている気がしている。それが僕にはどうも合わない。

 大事なことは、どうしても上下してしまう感情の振れ幅を小さくすること。あるときは、本田さんのように「上メンタル」になって、あるときは、ヤットさんのように「下メンタル」になる。

 サッカーにたとえていえば、試合前にすごく気合いが入っていて、「行こうぜ!」って自分も周りも鼓舞するんだけど、負けちゃうと「ドーン」と沈む。

 こうやってさっきまで「上」だったの急に「下」になる、またちょっとすると「上」になる……感情が乱高下するような選手は、プレーの波も激しくなってしまう。それはやっぱりプレースタイルにも出るし、メンタル的にもろく見えてしまったりする。

 もちろん、僕にだって感情の波はある。でもそれを極力小さく、細かい上下で済ませる。遠くから見たらまっすぐブレない、心電図のピーッて線のように見えるようにしていた。

 (第一回で)モヤモヤしてるときは、「とことんモヤモヤしてやろうと思った」って書いたけど、そうやって考えるのもこの「振れ幅」のためだ。

 うまくプレーができなくても、サッカー選手はしんどいのが当たり前だよねって考える。マイナスの感情を違う感情で無理やり補ってあげようとしたり、下げようとしたりしない。受け入れるわけだ。

 振れ幅を極力減らす。

 太い心の幹を作る。

 僕はずっとそうやってメンタルを捉えている。

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