名打撃コーチ・内田順三が教えた「素振りのドリル」
SEIYA'S BATTING REPORT vol.4後編。
「内田さんの何がすごいのか……バコーン!とベンチで音がした」
内田さんがいなかったら今の僕はいない(鈴木誠也)
これまでたくさんの指導者の方に出会いここまでプレーしてきました。
いいコーチもたくさんいましたし、正直に言えば、感覚的に合わないコーチもいました。人それぞれ、性格が違うので「合う、合わない」はきっとあるだろうと思います。
そもそも、生涯で「このコーチと出会えて本当によかった」と思えることはそうそうないのかもしれません。
幸いにも僕にはその出会いがあります。それが前回も配信で登場していただいた内田順三さんです。(前回はこちら)
内田さんはカープでは緒方(孝市)さんや江藤(智)さん、ジャイアンツでも阿部慎之助さん、坂本(勇人)さんなどを指導された打撃指導のスペシャリストです。
若い頃、その薫陶を受けて、僕自身は成長することができました。
内田さんの何がすごかったのか。今、振り返って考えると主に三つのことが思い浮かびます。
ひとつ目は「押し付けようとしない」。
ふたつ目は「引き出しがものすごい数だった」。
みっつ目は「コミュニケーションをよくとってくださる」こと、です。
10代で初めてお会いしてから数年、まだまだ一軍にも定着できていなかった僕は、当時二軍監督だった内田さんの指導に対して「これは自分に合いません」「こうなってしまうから、これは無理です」などと――本当に生意気なんですが、お伝えしていました。
内田さんはそんな僕に対して、「じゃあ、こっちをやってみないか?」とか「これならどうだ?」と提案してくださった。
それだけじゃなく、長い時間、練習に付き合ってくれるのです。体調がものすごく悪そうなのに、いつもどおりボールを投げ、バッティングを指導してくださったこともあります。
量もかなりやらされましたが、その練習メニューが豊富、やり方のバリエーションもいろいろとあって飽きることがありませんでした。
加えて選手、個々の性格をよくご覧になられていたのも感じていました。
例えば、僕に対してあえて怒らせるような言葉遣いをする。よく覚えているのは、「ストレートを振ってこい」と言われて打席に入ったときのこと。
調子が悪かった僕は、思わず初球のストレートを見逃しました。するとベンチから「バコーン!」という音が聞こえて、内田さんの「代えるぞ!!」という怒声が聞こえてきました。
プロの世界でもこんなことがあるのか――と思ったほどです。それ以外にもかなり口酸っぱく、いろんなことを言われました。そのストレスで円形脱毛症になったこともあります。
でも決して信頼は揺らぎませんでした。
それは先にも書いた、どんなときでも一緒に練習をしてくれていたその姿と、「違う言葉遣いで接する選手」もいたことが理由でした。
内田さんは、誰にでもきつく発破をかけるタイプではありません。その人の性格を見て、その人に合った接し方ができるのです。
いろんな言葉をかけられた僕ですが、それに対して「じゃあ絶対できるようになってやる」とイライラしながらも、その練習に前向きに取り組めました。僕の性格を完全に見抜いていたのだと思います(笑)。
僕がプロでここまでできたのは、そんな選手思いで面倒見のよい内田さんの存在があって、さらに二軍で1年目から使ってくださったからだと思っています。
そんな内田さんが僕に対して提案してくれた練習方法、ぜひご覧ください(鈴木誠也)
REPORT vol.1
「【2023年の進化へ】鈴木誠也「メジャーリーガーが持っているパターン、日本人選手との違い」」
REPORT vol.2
【全メニュー映像公開】メジャーで活躍するために必要なモノとは?鈴木誠也が突き詰めたオフのトレーニング
REPORT vol.3前編
「失敗覚悟で時間をかけた」鈴木誠也「トップ」を目指すための行動指針
REPORT vol.3後編
鈴木誠也「アメリカの選手に子どもの頃、どんな指導受けてたの?」と聞いたら……
REPORT vol.4後編
ー内田順三コーチに訊くー
Q.鈴木誠也選手のメジャー以降のバッティングをどう見ている?
Q.タイミングにアジャストする方法とは?
Q.良いバッターに共通することは?
Q.「鈴木誠也・打撃ドリル」② 良い素振りと悪い素振り
Q.内田流「最新指導法」ミートポイントを変えない
Q.【まとめ1】指導者・親は何を教えられるか?
Q.【まとめ2】子どもたちは「心技体」どれをまず鍛えるべき?
Q.【まとめ3】一番大事な"体”は何をする?
Q.指導者は試合中どこをチェックしているのか?