街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

本の出版に際して様々なラジオ番組や対談イベントに出させていただいている。特に先週は個人的ラジオスターウィークと言って差し支えなく、8つのラジオで話をさせていただいた。
TOKYO FM『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』。パーソナリティーの山崎怜奈さんと本について、芸人としての活動について、様々に話させていただく。流れで山崎さんが「超球形社というPodcastでは、ご友人の、マーケターの上杉魁さんとの二人喋りを……」と仰る。えっ、と思う。超球形社……マーケターの友人・上杉魁さん……。
上杉魁という名前の人間は私の大学時代の友人で、その彼と一緒に話しているPodcastが「超球形社」なのだが、それを今、山崎怜奈さんが、言った。事実に認識が追いつかなくて、うわえっどうしよう、と1秒に満たない隙間で戸惑う。
山崎怜奈さんが、私の友達の名前を、言っている。いま机の上にある、情報が整理された進行台本にもその文字は確かに書いてある。ということは「ダレハナ」の作家さんがこの文字をタイピングして、印刷して、ここに置いて、スタッフのみなさんが目を通して、それが山崎さんの声に乗って、全国に流れて。着いたときにはもう建っていたビルのように、当たり前の事実として、今この瞬間、世界に記録されている。私がまだ私でなかったかもしれない頃からの友達の名前が、TOKYO FMの電波に乗ってスマートに聴かれている。
笑いそうになる。だって、変だから。山崎怜奈さんが私の友達の名前を言ってるって、変ですよ。しかし番組はそれを情報としてリスナーへ届けるべく、引っ掛からずスムーズに進行している。当たり前だが、山崎さんが「ゲストの学生時代の友達の名前を全国放送でわざわざ言う」というボケを繰り出した訳では全くない。
そうだよなそうだよな、と面白がってしまう自分を宥める。番組の進行を妨げない相槌をしなければ。...