「投資」に興味はあるものの、目先の生活に追われ、なかなか一歩が踏み出せない30代子持ち世帯。前回は「そもそも、投資って本当にやるべき!?」をテーマに“投資の基本”をお話しました。第2回目は実践編。ファイナンシャルプランナー・大竹のり子先生が、30代子持ち世帯におすすめする「ミニマムリスク、ミニマムタスクな投資信託の始め方」をレクチャーします。手間なし・簡単・ローリスクにこだわっているから、これまで投資は後回し、資料を取り寄せては放置、投資という言葉にアレルギー反応を起こす……なんて人も今回はきっと大丈夫!
編集・文=濱田恵理
株式会社エフピーウーマン代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、ファイナンシャルアカデミー取締役、一般社団法人 金融学習協会理事。金融専門書籍・雑誌の編集者を経て、2001年にファイナンシャルプランナーとして独立。正しいお金の知識を伝えることで多くの女性の人生を支援したいという想いから、2005年4月に「女性のためのお金の総合クリニック」として株式会社エフピーウーマンを設立。現在、経営の傍ら、講演、雑誌、テレビなど多くのメディア出演を通じ、女性が正しいお金の知識を学ぶことの大切さを伝えている。『これ一冊で安心!投資信託のはじめ方』(ナツメ社)など、著書は合計70冊以上。プライベートでは2児の母。
始めどきは「今」! 時間を味方につけて
大竹さんは投資を始めたいなら「1カ月でも早く始めて!」と断言します。
大竹先生(以下大竹)「そもそも、投資はお金に自由が利く20代の方が始めやすいのは事実。子育てなどにお金がかかる30代は投資に使えるお金が少なく、どうしても二の足を踏みがちなのもわかります。
でも、裏を返すと、30代で投資をやっていたかどうかで、将来が大きく変化するのです。目先を重視する人と先々を考えている人では明らかに、老後資金などの資産形成に違いが生まれます。
投資は“時間”が最大の味方なので、39歳で始めるよりは30歳で始めた方がいい。少しでも早く始めましょう!」
そんな大竹さんが30代子育て世帯におすすめする投資が手間なし・簡単・ローリスクな「投資信託の積立」。では、実際に始めるにはどうしたらいいのか? 具体的なやり方をご紹介します。
活用しないと損!「NISA」と「iDeCo」
「投資信託」を始めるにあたり、私たちが利用できる主な制度は「iDeCo」と「NISA」の2つ。どちらも、運用して得た利益を非課税とすることで、より資産形成を始めやすいように国が作った制度です。
ここでは、それぞれの特徴をはじめ、メリット・デメリットなどを解説!
iDeCo
大竹「iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことで、自分で商品を選んだ上で将来に向けて毎月掛け金を掛け、自分で年金を作る制度です。商品には投資信託、預貯金、保険があり、積立期間は60歳までです。
通常、投資で得た利益には税金がかかりますが、これが非課税になります。NISAとの税制上の大きな違いとして、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税の節税効果が得られます。
デメリットは、原則60歳まで受け取れないということ。急にまとまった資金が必要になっても引き出すことができないので、掛け過ぎには注意しましょう。
掛け金は月々5,000円から1,000円単位で設定が可能です。毎月の掛金の上限は職業などにより、月々12,000円~68,000円(年間144,000円~816,000円)で、金額は年1回変更できます」
※加入者が60歳より前に死亡した場合、5年以内に遺族がその全てを一括で「死亡一時金」として受け取れます。ただし、受け取れる金額は、加入者が死亡した日の時価評価額ではありません。所定日に売却され、現金化されたうえでの受け取りになります。
NISA、つみたてNISA
大竹「NISAとは、株式や投資信託に投資して得られた利益が非課税になる制度のこと。主なものとして一般NISAとつみたてNISAの2種類があります。
NISAは最低運用金額がなく、年間120万円までの投資なら非課税で運用が可能。最長保有期間は5年で、毎年120万円ずつ投資を行えば、最大600万円まで非課税で運用ができます。ただし、その年に非課税枠の未使用分があっても翌年に繰り越すことはできません。
つみたてNISAは投資信託を中心に年間40万円まで積立することができ、最長20年間、そこから得られた利益が非課税となります」
「投資信託」の商品の選び方って?
大竹先生曰く、「投資信託をするなら、利益を非課税にできるiDeCoまたはNISA、つみたてNISAを利用しない手はない」そう。
ちなみに「老後資金を貯めたいなら『iDeCo』、ある程度まとまったお金を投資信託で運用したいなら『NISA』、10年以上先の子どもの大学資金などコツコツと長期にわたって準備したいなら『つみたてNISA』を選ぶのがベター」とも言います。
何のための資金なのか、60歳まで引き出せなくて大丈夫か、投資額はどれくらいかなどを基準にどの制度を利用するか検討するとよいでしょう。
では、これらのお得な制度を利用し、具体的にはどんな商品を買えばいいのか? ミニマムリスク&ミニマムタスクな投資信託を選ぶ際のポイントをチェック!
「バランス型」を買うべし!
大竹「特定の投資先だけで運用をするのではなく、複数の投資先に分散して、リスクを分散させるのがポイント。
具体的には、国内、海外それぞれの株式と債券で運用するのが基本の『分散』です。初心者の人で手間をかけたくないなら、『バランス型』の投資信託を買うのがおすすめ。
バランス型とは、国内と海外それぞれの株式や債券、不動産などさまざまな資産にバランスよく分散して運用する投資信託のこと。手間なし、簡単、ローリスク、そして合理的です!」
重視すべきは「手数料」
大竹「『バランス型』の投資信託を購入する際、留意したいのは『手数料』。なぜかというと、投資信託は『購入時』『保有時』『売却時』の3つのタイミングで手数料がかかるから。
近年、購入手数料が無料(ノーロード)の投資信託も多く販売されています。つみたてNISAの場合、購入手数料はすべて無料の商品しか取り扱いがありません。そして、売却時の手数料は微々たるものです。
でも、信託報酬と呼ばれる保有中の手数料はしっかりと気にしてください。投資信託を長期にわたって保有する場合、少しの手数料率の差が、長期ではなかなかの金額の差になるからです。そのため、信託報酬は、0.3%以下の低いものを選ぶようにしましょう」
1年に1回は投資信託の見直しを!
大竹「仕事や育児、家事に追われている30代子持ち世帯のみなさんは、とにかく時間が惜しいもの。だから、面倒なことは排除したい! その気持ちがよくわかるからこそ、難しいことをおすすめするつもりはありません。
強いて言うなら、1年に1回の頻度で、定点観測を! 家計(支出)と同様に自分が保有する投資信託の時価や直近の値動き、積立金額が適正かどうかをチェックしてほしいところ。
ほとんどの金融機関ではインターネット上で資産の状況を確認できるので、もし複数の投資信託を積立しているなら、そちらをチェックして、全体バランスを調整しましょう。
たとえば、積立当初、国内と海外の株式、債券をそれぞれ25%ずつ配分していたけれど、1年の間に海外の株式が値上がりして、50%が海外株式になっていた、というのであれば、それを一部売却して、割合が減ってしまったものを買い増し、全体バランスを25%ずつに戻すのです。
こうした作業を『リバランス』と呼びます。ちなみに、『バランス型』の投資信託であれば、こうした作業も不要。あらかじめ決められた方針に基づいて運用先の配分を自動調整してくれます。
また、収入ダウンなどで家計に変化があった場合には、投資に回す金額が妥当か否かの検討も。毎月の家計に余裕がない場合は積立金額を一時的に減少させるのもありです。1年に1回、インターネット上で資産の状況を確認するだけなら仕事や育児、家事で忙しい人もできるはず」
“iDeCoまたはNISA、つみたてNISAを通じ、信託報酬が安い、バランス型の投資信託を購入する”ことのメリットがわかっていただけましたか? 第3回目では、職業や家族構成の違うご家庭ごとに、家計のチェックをしつつ、ベストな投資を提案予定です!