起業、独立、複業など「自分軸」に沿って選択することで、より理想にフィットした働き方を手に入れようとした女性たちの等身大のストーリーを追う連載「INDEPENDENT WOMEN!」。国内外のファッションブランドのPRや卸販売、コンサルティングなどを行うHarumi ShowroomのFounder兼PR Director 春海 茜さんが語る後編です。

文=小嶋多恵子 写真=小嶋淑子

Harumi Showroom Founder兼PR Director 春海 茜
<プロフィール> アパレル会社に勤務後、2014年株式会社ハルミショールームを設立。2021年現在の取扱いブランド数は20を超える。春海氏自身がメディアと強いつながりを持ち、PRサービスプロバイダー、ファッションビジネスコンサルタントなど幅広い業務を展開。卸業としては、三越伊勢丹、高島屋などの百貨店からユナイテッドアローズ、ビームスなどのセレクトショップまで全国100店舗以上の小売店にサービスを提供。自身の天真爛漫かつ親しみあるキャラクターはエディターやスタイリストをはじめ業界人からの信頼も厚い。一児の母。

 

コロナ、デジタルシフト・・・
時代が変化する中見つめ直す“私”という価値

 会社を辞め、ひとりでやっていくことに自信があったわけじゃないと語った春海さんだが、現在は変わったのだろうか。

「もちろん独立したての頃は不安な毎日でした。でも仕事のスケジュール帳にアポイントが入る、予定で埋まる状態が続いて、それが何よりの安心材料になりました。ほかにも、例えば“このブランドにはこの雑誌がいい”と攻めのプレゼンをし、そこから雑誌掲載へ、さらに電話が鳴り止まないほどのお問い合わせへとつながっていく。その一連の流れを見るたびに、“あぁ、私の判断は正しかった、認められたんだ”って、熱いものが込み上げてきますよね。その積み重ねが手ごたえや自信になっていったと思います」

 仕事が順調に進む中、新たな課題を感じることも。

「コロナ禍になって2年目ですが、その影響をかなり実感しています。ブランドにとってPRは基本的に月々定額のお支払いなので固定費と捉えられてしまうこともあり、正直コロナ禍を機にご縁がなくなってしまったところもあります」

 さらに、デジタルシフトが急激に進んだことによるPR業界の変化も大きい。

「昨今では雑誌よりもSNSでの広告PRに大きくシフトしていっている。インスタグラムにタグづけしてもらう、インフルエンサーにPRしてもらうなど、デジタルマーケティングが主流になりつつあります。私たちもコロナ以前から自社のSNSを立ち上げたり、メディアでブログをスタートしたりと着手していましたが、最近ではYoutubeを開設するなどデジタル対策を推し進めています。特に、ブランド単体のSNSはあっても、ショールームとしてのSNSをしっかり運営している所はまだ少ないと感じているので、当社の強みになっていると思います」

 コロナ禍を経て、人が密集するのを避けるためにオンラインで展示会や商品の貸し出しを行うデジタルショールームも登場するようになった。しかし、「人が好き」という彼女にとっては、それでは意味がないという。

「デジタルショールームをやるくらいなら、辞めちゃったほうがいいです。今も、独立した時もですが、自分がやっている意味がほしいんですよね。私じゃなきゃできない何か。これは働く上でずっと持ち続けている核であり、課題です。私の会社がクライアントにとってどんな有益なことをもたらすのかをプレゼンできないといけない。コロナ禍の今、新しいことにチャレンジする気持ちとブレずに原点に戻る気持ちを改めて見つめ直しています」

 

ショールームは自分らしさ全開になれる
唯一無二の場所

 最後に、理想の働き方とはどんなものか聞いてみた。

「例えばお給料が高くて嫌いな仕事か、お給料は安いけど楽しい仕事かだったら断然後者。24時間で占める時間が一番多いのが仕事じゃないですか。ならば、なおさら楽しいことに時間を使いたい。安定なのか冒険なのか、独立する時は悩みましたけど、今はもう前を向いていくだけ」

 周りにも支えられたと感謝の気持ちを口にする。

「正直、対人コミュニケーションはすごく苦手なほう(笑)。それでもこんな私に会いに来てくれる人がいる、時間を割いてくれる人がいる。そこに無上のよろこびを感じています。『久しぶりに会いたいからショールームに来たよ』って来てくれるお客さんへ、私も『お飲みものはお水とビール、どちらになさいます?』って(笑)。そんなゆるいムードでもいいと言ってもらえる、居心地がいい場所が作れたことがうれしいんです。だから、これからも少ないながらも人とのつながりは濃密に!を大切にしたいですね。クライアントさんや社員たち、私を慕ってくれるみんなが幸せに満たされていればいい、そう思っています」

 

春海 茜さんてこんな人! ご本人のリアルに迫る一問一答

――座右の銘は?

人は鑑(かがみ)。
自分の表情や感情は相手に伝わってしまうもの。なので相手が笑顔でいられるよう、私も笑顔を意識しています。

――耳を傾けてよかったアドバイスは?

苦手な人とは働かなくていい。
対人関係に悩んでいた時、「そこまで我慢して独立した意味ある? 苦手な人とは働かなくていいんじゃない?」って親しいクライアントさんから。相手を選べるのも独立ならではのメリット。

――仕事をする上で譲れないことは?

スピード感。
メールの返信は猛スピードで返します。締め切りも前倒して守る派。

――困った時に助けられた人やモノは?

ハロー!プロジェクトの動画。推しはモーニング娘。とアンジュルム。
接客中ネタに困った時にアイドルの話をするとわりと盛り上がります(笑)。得意分野で話しをつなぐ営業トーク。

――独立してマイナスなことは?

海外出張に行けなくなったこと。
前職ではコレクションのメディアアテンドのためNYやロンドンに行っていたので、今はそれがないのが少し残念。少数精鋭でやっているのと子どもが居るため、海外出張で1週間会社を不在にすることは現実的ではないですね。

――今の悩みは?

とくに繁忙期は家族に負担をかけていること。

――ストレス解消法は?

踊ること、歌うこと。
踊りは高橋 愛ちゃんのYoutubeに合わせて夜な夜なひとりで。歌はドリカムやMISIAなど声張る系。演歌の十八番は『津軽海峡冬景色』。

――自分らしさを失わないために意識していることは?

格好つけない。
この明るく大雑把な性格をポジティブに捉えてます。

――仕事で落ち込んだときの対処法は?

ひたすら寝る、引きこもる。
やりたいかどうか、やるべきかどうか、己の心に耳を澄ます、問いかける。それと過去の言葉を思い出す。

――独立したい人へのアドバイスは?

いろんな人に会って、いろんな人の話を聞く。
自分の考え以外の考えを聞いておくのは大事。もし会いたいなって思う人がいたら積極的に連絡を取ったり誘ってみることです。人脈は財産になる可能性大!

――春海さんの強みは何だと思いますか?

親しみやすさ。

――逆に直したいところは?

後先考えないで進む猪突猛進なところ。でも独立する時にはこの性格が役に立ちました。

――これからどんな世の中になってほしい?

心が満たされる世の中。
公園でピクニックするとか、自然の中でゆっくりと過ごすことがスタンダードになる世の中だったらいいですね。日本人はとにかく忙しすぎますから。

――春海さんにとって成功とは?

自分の中で満足度が高いこと。

お金持ちとか、いい家に住んでるとか、周りから見える評価はどうでもいい。あくまで自分のやっていることにどれだけ自信が持てるか、これに尽きます!

 

起業前と起業後の環境や気持ちの変化をチャートで分析!

 

 「独立してプライベートな時間が増えたようにも感じますが、仕事が趣味みたいなものなので時間的余裕でいえば会社員時代と同じくらいです。でも意味合いが全然ちがう。なので、ストレスは半減。仕事をやらされている感はないですし、つらいことでも全部自分で選んでいるものなので乗り越えられます。その分、やはりプレッシャーは大きい。でも私、ドMな性格なのでわりとこの重圧、好きかも(笑)。自分らしさは全力で0:10! ハルミショールームなので、らしさ全開でやってます!」