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 映画、ドラマ、漫画の多くは主人公を中心に物語が進んでいきますが、時折、脇を固める重要人物に焦点をあてる物語、いわゆるスピンオフも公開され、物語をより奥深いものにしてくれます。

「Disney+」配信中の「アガサ・オール・アロング」は、1つのドラマシリーズであるものの、同ドラマシリーズ「ワンダビジョン」の主人公ワンダ・マキシモフのヴィランとして登場した魔女アガサ・ハークネスに焦点をあてた作品ということで、スピンオフ作品としても捉えることが出来ると思います。

全9話

 多少ネタバレになりますが「アガサ・オール・アロング」は、「ワンダビジョン」でワンダに魔力を奪われたアガサが、失った魔力を取り戻すために、同じく魔力を失った魔女仲間とともに試練をクリアすれば願いを叶えてくれるという「魔女の道」に挑む物語です。

 日本での知名度が低いキャラクターを掘り下げたスピンオフですが、近年賛否が分かれるMCUの中では比較的評価の高い作品みたいです。

 伏線が散りばめられた物語の面白さももちろん高評価の要因だと思いますが、個人的には主人公アガサの一筋縄ではいかないキャラクター性が物語を盛り上げたと思います。

 アガサの特徴を1つ挙げるとすると「裏切り者」。私利私欲のために手段を選ばない危険人物です。

 そんなアガサの魅力は行動の一貫性と変化にあると思います。

 アガサは、日和見型ではなく孤独型の裏切り者で、行動原理に一貫性があります。

 日和見型の裏切り者はわかりやすい一貫性がないため視聴者に嫌われがちですが、アガサのような裏切り者はどんなに非道でもそこに美学にも似た一貫性を感じることが出来るため魅力的に映ります。

 一方で、矛盾しますが変化する人物でもあります。

 「毒薬変じて薬となる」じゃないですが、悪い影響を与えてきたアガサも、心情の変化や気まぐれ、目的に一致によってチームに良い結果をもたらすことがあります。

 この「毒」に「薬」と変化する変幻自在な存在感が、一貫性と合わせてアガサの魅力だと思います。

 ただ、可愛げがあって愛される 「裏切り者」も多い中で、アガサ・ハークネスはあまり可愛げを感じないので、愛されるタイプの「裏切り者」ではないような気がします。

 とはいえ「アガサ・オール・アロング」は、アガサの魅力と物語自体の良さが合わさって面白い作品です。続編があれば見てみたいと思いました。

 ちなみにMCU最初の「裏切り者」といえば、裏切りの神ことロキで、彼もまた一貫性と変化を併せ持つキャラクターですが、こっちは愛される「裏切り者」です。ロキが主人公を務めるドラマシリーズ「ロキ」「ロキ2」は、MCUの可能性を広げる点でも、ロキというキャラクターに深みを持たせた点でも傑作でした。