いつもシンクロナスをご覧いただきありがとうございます。シンクロ通信日曜日担当の望月です。
映画を観て泣いた経験がある人はどれだけいるのでしょうか。僕はあまり泣かないタイプなのですが、泣く寸前まで感動がこみ上げてきたが映画ならあります。
2024年2月16日公開された『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』。興行収入100億円突破の大ヒット作品で、最近Blu-ray&DVDの発売が開始し、サブスクにも登場し始めました。
原作の『ハイキュー!!』は週刊少年ジャンプで2020年7月まで連載されていた古舘春一先生のバレーボール漫画で、主人公・日向翔陽(ひなたしょうよう)と所属する烏野高校(からすのこうこう)が高校バレー全国制覇を目指す物語です。春高バレーやパリ五輪日本代表とのコラボで見る機会も多かったと思います。
その中でこの『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』は、県予選を経て、全国大会3回戦音駒高校(ねこまこうこう)との因縁の一戦を描いた映画です。
スポーツ漫画では、試合を盛り上げるため手段の1つとして「因縁」を利用することが多い印象です。幼馴染や中学時代の同級生が所属しているなど知り合いが所属している場合や、地区が一緒で過去何度も対戦経験があるなどです。
ただ、この「因縁」の使い方がスポーツ漫画の展開を難しくしている面もあると思っています。
例えば主人公が高校生なら、ほとんどは地元の高校に進学し、地区予選から全国大会を目指します。そのため話を盛り上げる都合上、最大のライバルはだいたい同じ県内にいます。
そうなると全国大会に進んだ場合、対戦相手は全国常連の強豪で、主人公たちと相手の関係は、ライバルからチャレンジャーVS強者になります。そうなると全国制覇への高い壁としての物語を盛り上げますが「因縁」の要素が薄まります。
この「因縁」の薄まりが、「地区予選のほうが盛り上がっていた」という印象を読者に与えて、主人公たちはどんどん成長しているはずなのに、物語は尻すぼみしていると読者に感じさせる1つの要因になっているのではと考えています。
そのため県予選で敗退して終わったり、主人公が海外挑戦したりして、全国大会を避けている?作品も多い印象です。
その中で『ハイキュー!! 』は全国大会に最大の因縁を持ってくることに成功し、長期連載を尻すぼみすることなく走り切った作品だと思います。
烏野高校は宮城、音駒高校は東京のチームで練習試合で初対面し意気投合、その後の合同合宿を経て、お互い県予選を勝ち抜き2チームの約束になります。この過程で師弟関係が生まれたり、好敵手として関係を深めたりして徐々に「因縁」が形成されていきます。またそこに監督同士の選手時代からの「因縁」も絡んできます。
そういった多くの「因縁」の決着がこの「ゴミ捨て場の決戦」です。
連載やアニメを見続けてきた人は「因縁」が形成する過程を全て見てきて、主人公と同じように烏野高校VS音駒高校の一戦を待ち望んでいました。
そんな「因縁」の詰まった一戦だったからこそ、上映開始1秒で泣く寸前まで私の感情がこみ上げさせました。そして1時間26分の間「因縁」に決着がついていく感動と「因縁」が終わってしまう喪失感に感情を揺さぶられ続けました。
『ハイキュー!! 』には音駒高校以外にも、戦い方や歴史において主人公たちと対になるライバルたちとの「因縁」が詰まった作品です。連載は終了しましたが、映画やイベント、タイアップでこれからも目に触れる機会が多いと思いますので、是非一度読んでみてください。