いつもシンクロナスをご覧いただきありがとうございます。シンクロ通信日曜日担当の望月です。

 何かを始めるきっかけは人それぞれだと思いますが、スポーツに関しては人気漫画・アニメが少なからず影響しているという話をよく耳にします。

 実際、現役の日本代表が漫画『ハイキュー!!』を読んで影響を受けたことや、漫画やアニメをきっかけにバレーボールの試合を観に行くようになった新規ファンについての特集が2024年パリ五輪の直前に組まれていました。

 もちろん現在のバレーボール界の盛り上がりが前提にありますが、漫画やアニメが現実のスポーツに少なくない影響を与えたんだなという印象です。

 同時に新たな興味も生まれました。

 『ハイキュー!!』が選手への影響やファン拡大だけではなく、プレーヤー人口を増加させるほどの作品になるのかどうかという興味です。

 というのもこれまで面白いスポーツ漫画をたくさん読んできたのですが、私の先輩方の世代のように『スラムダンク』を読んでバスケを始めた、『キャプテン翼』に影響を受けてサッカー選手を志したなど漫画の影響でプレーヤーになるという話は近年の漫画からは聞かないなと思っていたからです。

 『ハイキュー!!』は『キャプテン翼』『SLAM DUNK』に匹敵する名作だと個人的には思っているのですが、プレーヤー人口を増やすのはかなりハードルが高いように思えます。

 そもそも作品のパワーだけでなく、時代背景も影響してくるものかもしれませんし。

 例えば学校現場の状況。

 日本でスポーツをするとなると、部活に入ることが最も一般的な手段だと思いますが、その流れを大きくしたのが1989年に改訂された学習指導要領。

 この教育の高度化・受験競争の激化の弊害を受けて改訂されたこの学習指導要領において、部活動は「全入」の時代に突入しました。

 そして『キャプテン翼』『SLAM DUNK』の連載、アニメ放送時期はおおよそ部活動全入時代と重なります。

『キャプテン翼』
・連載期間 1984年~2024年(ウェブサイトにてネーム状態で連載継続中)
・アニメ放送期間(初代) 1983年~2002年
(第1期1983年~1986、第2期1994年~1995年、第3期2001年~2002年)

『SLAM DUNK』
・連載期間 1990年~1996年
・アニメ放送期間 1993年~1996年。

 大空翼や桜木花道ら超有名キャラクターへの憧れがあった一方で、何か部活を選ばなければいけない環境もプレーヤー人口を増やす一因になったのでは推測します。

 では現代はどうか。

 部活動の問題が多く叫ばれていますが、基本的には部活動全入のままという印象なので、1989年以降から変わらず、何かの影響である程度の強制力が働き、特定のスポーツを始める可能性はありそうな気がします。

 しかし実際は『キャプテン翼』『SLAM DUNK』ほどの影響力を発揮したという話はあまり聞きません。なぜなのか?

 ひとつの可能性として、スポーツを始めるきっかけが部活動への入部のタイミングではないというのも考えました。もしスポーツを始めるなら漫画やアニメの影響より、親がそのスポーツが好きでその影響で小学校から始めて、嫌にならなければそのスポーツを部活動でも続けるパターンが多いのではという可能性です。でもそれは今までずっと同じなような気がします。

 あと考えつくのは娯楽の増加、スポーツへの興味の低下などですが、おそらく1つの要因ではなく、多くの要因が重なっているんだと思います。

 そもそも知らないだけで漫画・アニメの影響で特定のスポーツを始めた人は変わらず多いのかもしれません。

 もし「漫画・アニメがスポーツ文化に与える影響」的な研究論文があれば是非読んでみたいです。

 シンクロナスでは日本のサッカー文化発展のヒントを探るべく、日本代表や欧州トップリーグで活躍し、現在はドイツで監督をしている岡崎慎司さんの「Dialogue w/ (ダイアローグウィズ)」を配信中です。

岡崎 慎司
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 長々と憶測を書きましたが、ただただ 『ハイキュー!!』は面白いと言いたかっただけです。