「子どもがいなかったら、別れている」「一方的に、妻に嫌われている」「夫は何もしてくれない」

 そんなとき「夫婦」として何かできることはないのか。もう仲良くはできないのか。夫婦はやめるべきなのか――?

 夫婦カウンセラーとしてこれまでに2000組の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』が反響を呼ぶ安東秀海氏に、実際の相談者とのやり取りを聞く。

 今回は「いつもイライラしている妻」と仲良くするのをあきらめた夫のお話。

相談者:政彦さん(仮名)
 結婚は2012年。専業主婦の妻と小学校3年生の男の子、6歳の年長の女の子の4人家族。
 子供にきつくあたり、自分に対しても常にイライラしている妻と口論の毎日。子供にストレスを与えているのではと心配している。
 もっと明るい穏やかな家庭にしたいが良好なコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのか、関係性を変えることはできるのかと悩んでいる。

家事も育児も完璧にこなそうとする妻とケンカの毎日

安東秀海(以下、安東)夫婦関係でお悩みとのことですが、こういったカウンセリングを利用されるのは初めてですか?

政彦さん(以下、敬称略)はい。でも妻が占い好きで、夫婦の悩みを聞いてくれる占いに連れていかれたことはあります。相性が悪いと言われて、妻は納得していましたけどね。

安東:なるほど。では改めて伺いたいのですが、政彦さんとしてはご夫婦関係のどんなことにお悩みですか?

政彦:実は私、昔から子どもにきつくあたる母親がすごく嫌で、そういう人だけは選ばないで結婚しようと思っていました。

安東:なるほど。

政彦:妻も結婚する前は毎日笑っているような人でした。保育士の免許も取ったり、子供の教育にも関心が高かったり、すごく穏やかに暮らせるかなと思って結婚したわけです。

 でも実際に子供が生まれると、育児が大変というのもあると思いますが、毎日子供にきつくあたるんですね。それは私にとっては些細なことに感じてしまって。

 例えば、片付けろと言うぐらいでそんなに叱らなくてもいいんじゃないかって。本人もすぐ怒っちゃうことや私に対しても常にイライラしてしまうことを意識しているみたいなんですけどね……。「そういうのはやめてほしい」と言うと、それで口論になるんです。

『夫は、妻は、わかってない。』(安東秀海・著)

安東:政彦さんから見て、少しきついなと感じていらっしゃるんですね。

政彦:はい。子供だけじゃなくて私も怒られるんですが、片付けろとか、洗い物が遅いとか、ものを動かしたとか。

 本人も潔癖症というかきれい好きなところがあって、完璧にきれいにしておきたい。完全に片付けないと寝ちゃダメとか出かけちゃダメとかね。

安東:そのことについてご夫婦でお話になったことはありますか?

政彦:話したことはあります。でも「基本的に自分はこういう考え方だから」と言って歩み寄ろうという態度はないです。

安東:そうなんですね。「怒る」と表現されているのは、感情的に、ということですね?

政彦:感情的になっていますね。毎日です。

 だから普段はあまり喋らないようにして、なるべくコミュニケーションを取らないようにしていますが、本来は僕の望むところではなくて、やっぱり明るい穏やかな家庭にしたいんです。

 もちろん良いところもたくさんあるんです。妻は食にもすごくこだわりがあって、子供が生まれてからいろいろ勉強するようになって、食品添加物や農薬とか気にしていますね。僕の方はバランスよく食べられればいいし、完全に無農薬の食べ物だけを食べるわけにはいかないという考え方ですが、彼女は自分で決めたことは譲らないですし、突き詰めるところがあります。

安東:なるほど。

政彦:基本的には優しくて、機嫌がいいときは子供にハグをしたりして、子供も怯えていないし普通に接しているんですけどね。でも子供には何かしらストレスを与えているのではないかなと心配しています。

安東:はい、ここまでお話を伺ってみて、何だかとっても愛情深いお母さんなんだろうなって感じています。では、あらためて、今日の時間の中でクリアにしたいことや解決したいことはありますか? 

政彦:妻とのスマートなコミュニケーション方法を知りたいです。

 今はお互いの意見が合ってないので、どうすればいいのか。今はあまり話さないようにしていて、よほどひどいときは言いますが、何か言うと怒りに火をつけちゃうので……。

 ただこの状態をこれからずっと続けていくとなるとちょっと憂鬱になるので、関係性が変えられる可能性を感じられたらいいですね。

妻との良好なコミュニケーションの方法を知りたい夫

安東:今は奥様に注意をしたり指摘をしたりするのは極力避けているということですが、全体のコミュニケーション量、つまり会話・対話も減っているということで合っていますか?

 

政彦:そうですね。言い合いになりたくないですし、罵り合いになってもしょうがないので……。

安東:コミュニケーションの質もそれに伴って低下していそうですね。

政彦:はい。スケジュールの確認とか、来週の週末どうする?とかそれぐらいで、あまり深い話というのは全然ないです。

安東:そうですよね。今日は奥様のお話を伺えていないので、あくまでも政彦さんからお聞きした様子から推測しているだけなんですが、政彦さんからイライラして見える奥様にも、何か胸に抱えたわだかまりのようなものがあるのかな、って思います。

 以前奥様と占いに行かれたということですが、いつぐらいのことですか?

政彦:息子が2歳ぐらいのときなので、6年ぐらい前でしょうか。

安東:どういったきっかけで占いに行こうとなったのですか?

政彦:そのときは妻の方が危機感を感じていたようで、夫婦仲があまり良くないというのがありまして……。でも子供も小さかったので、今みたいな片付けがどうのこうのというのではなくてまた別の問題があったと思うんですよね。

安東:なるほど、その頃に奥様が感じていた危機感についてはお話はされましたか?

政彦:いや、詳しくは聞かなかったです。

安東:そうなんですね、やはり何か見えてない側面がありそうです。あらためて何か気になることや思い起こされることはありませんか?

政彦:もしかしたら、推測ですけど占いに行ったのが下の娘が生まれる前だったんです。

 彼女はずっと子供を2人希望していたんですが、夫婦生活のほうに僕があまり積極的じゃなかったというのもあって、それで悩んでいたのかもしれないですね。

安東:なるほど、占いに行かれたのは下の娘さんの妊娠前なんですね?

政彦:そうです。その当時は計画的で「占い的にこの日がいいから、この日は帰ってきて」という話をよくしていましたね。

安東:そうなんですね。それは確かに妊活というか、夫婦生活に関して何かお悩みがあったのかもしれませんね。

 あと、奥様との馴れ初めをお聞きしたいのですがよろしいですか?

政彦:仕事の先輩の紹介で知り合ったのがきっかけです。

安東:なるほど。すぐにお付き合いされることになったんですか?

政彦:そうですね。昔はすごく仲が良かったんです。

安東:そうなんですね、結婚まではどのくらい交際されたんですか?

政彦:結婚前に同棲を半年して、うまくいくだろうと思って結婚したんですよね。その頃はケンカもしなくて、全然問題がなかった。

 子供がいなくて2人だけというのもあるとは思うんですけど……。今もたまに2人だけで出かけるときもありますが、そのときはお互いに冷静になっているのでケンカにならないですね。日々の生活にストレスを抱えているのかもしれません。

安東:なるほど。奥様は保育士免許を取られたんですよね?

政彦:はい。

安東:それは産後ですか?

政彦:産む前です。結婚する前ぐらいなので、教育に興味があったようですね。

 普段他の人に対してはすごく印象がいいですね。私の実家に行ったときも印象がいい感じで、そういうテンションで日々いてほしいんですけど、家に帰ってくるとまた怒っちゃう。できれば子どもといるときにも穏やかでいて欲しいですよね。そのためにどうしたら良いか知りたいです。

うまくいかないコミュニケーションの背景にある「感情」

安東:現在というか、今日時点の夫婦関係はどんな状態ですか? 

政彦:お互い緊張感はありますね。冷戦状態というか。向こうも僕にミサイル発射しないようにという意識はあると思うんですよね。だから、つかず離れずという感じです。

安東:そうなんですね。夫婦の間に起こる問題のひとつは政彦さんもおっしゃるようにコミュニケーションの問題ですね。これは表面化しやすいですしわかりやすいので、カウンセリングにいらっしゃるご夫婦の多くがコミュニケーションに関することに問題意識を持たれているのではないでしょうか。

 でも、コミュニケーションの問題をもう一段階深めていくと、そこに考え方の違いや価値観の違いなどが潜んでいることが多いんです。

 考え方や価値観の違いがあるのはある意味、当然なのですが話し合ってもうまくいかないとか話し合ったら喧嘩になってしまうというように、対話をするほどに「違い」ばかりが際立ってくるように感じると、話すことに意味を見いだせなくなるのもムリはありません。

 政彦さんの場合は、指摘すると喧嘩になってしまうのでコミュニケーションの頻度を減らしていて、衝突を避けるための効果的な方法ではあると思いますが、それだけでは本質的な関係改善にはつながらないですよね。

 
【大反響】夫は、妻は、わかってない。
安東秀海・著

やっぱり夫婦はあきらめるべきなのだろうか……?
長年夫婦で「夫婦のカウンセリング」を行い、2000人以上の話を聞いてきた「LifeDesignLabo」の安東秀海先生がその解決策を紹介していく。不倫、セックスレス、借金から「夫が嫌いになった」といった感情の課題まで。代表的なカウンセリング事例を掲載し、夫婦の、そして自分の人生との向き合い方を提示。自分を大事にできる一冊。


政彦:どうしたらいいでしょうか。

安東:コミュニケーションの問題の背景には価値観の問題が潜んでいることが多いとお伝えしましたが、もうひとつ、そこには感情にまつわる問題が隠れている場合もあります。

 例えば、お子さんへの接し方、教育の方針が違うのはそれぞれの考え方もあるので当然なのですが、これをお互いに許容できなかったり、許容されないことに憤っているのだとしたらそれは感情の問題なのかもしれません。

 奥様が政彦さんから見れば、やりすぎかなと思う叱り方をお子さんにとっている。

 これは奥様からお子さんへのコミュニケーションの問題でもありますが、その背景には親としてのあり方への違和感がありますよね。そして何より、その違和感について指摘をしているのに、指摘を受け入れてもらえないとか、改善しようとしてくれないということに少なからずモヤモヤがあるんだろうなと思います

政彦:その通りです。

安東:この感情的に何かモヤモヤしているというのは夫婦の間ではよく起こることで、もしかしたら奥様の方にも同じくモヤモヤがあるのかもしれません。

 「その叱り方はやめて欲しい」と言うときに、そこにどんな感情が乗っかっているのか、また、奥様が、どんな感情でそれを受け止めているのか。

 それによって状況がずいぶん変わってしまいます。

 政彦さんの言葉にイライラやネガティブな気持ちが乗っかっていると、奥さまもそれに反応して感情的になりやすいものですし、奥様の反応にネガティブさを感じると政彦さんもまたそれに反応してネガティブな反応を返してしまいやすくなります。良好なコミュニケーションを阻害するのはこういったネガティブな感情の応酬だったりするわけですが、案外その事にお互い無自覚な場合があります。

 ご夫婦としてのコミュニケーションを改善するためには、まず政彦さん自身が奥様と接している時の感情について意識しておくことが大切です。

政彦:確かにおっしゃる通りですね。どういうふうに言っていいのか、時間とかタイミングもあるんでしょうけど、例えば手紙に書くようなアプローチの方が冷静になれるんですか?

(写真:takasuu / iStock / Getty Images Plus)

安東:そうですよね、感情の扱い方って本当に難しいんです。特に男性は仕事をする上では感情を横に置くことに慣れていますよね。

 職場で腹が立つことがあったり、嫌なことがあっても感情的に怒ったり不満をぶつけたりはしないですよね。

政彦:そうですね。

安東:一般的に男性は、感情を横に置いて冷静に話すことを「良し」とする傾向があります。

 感情は不安定で流動的、その割にものすごくエネルギーがあるものだからきちんと伝えるときには横に置くか、しっかりフタをしておかないと誤解を生んだり反発を呼んだりしてしまう厄介なもの、という認識があるからかもしれません。だからこそ、政彦さんがおっしゃったように、手紙に書いて文書で伝えた方がうまくいくのではと思えたりもします。

 ところがですね、そんな風に、努めて冷静に伝えようとすればするほど、「本音で話していない」ように映る場合があるんです。

 更には、どこか逃げているような印象になったり、きちんと問題に向き合っていないような態度に見えて、却って相手をイライラさせてしまうこともあります。

政彦:なるほど、わかります。

安東:もちろん、男女論だけで語れるものでもありませんし、すべてのケースに当てはまるわけでもないんですが、感情を表現している相手に対して冷静に話をするのはむしろ逆効果の場合があるんですね。

 よく共感が大事、と言われますが、感情は響き合うものというか、共鳴しあうことで分かり合えるところがあって、フタをしたり横に置いたりせず、むしろ真正面から伝えてみたほうがうまくいく、ということもあるんです。

政彦:それがコミュニケーションになっているっていうことですね。よくテレビで大家族の夫婦がめちゃくちゃ喧嘩しますけど、仲がいいですよね(笑)。

安東:そうですね。それぞれがうまく気持ちや感情を伝え合えると、お互いが聞いてもらったことで満たされたり、落ち着いたりする場合もあります。

 もちろん、ただ感情を投げつければいいというわけではないですし、ネガティブな感情の応酬をお勧めするワケでもないのですが、感情を遠ざけて冷静に話すことだけがいいとは限らないということです。

政彦:なるほど。

安東:あと、これも男性に多いですが、冷静でいるつもりでも案外「負の感情」が漏れてる、というケースもあったりしますね。

政彦:難しいですね。妻は朝から不機嫌な顔で2階から降りてくるんですね。まず、不機嫌でいないでくれと言うんです。怒らなくてもいいから普通のテンションでいてほしいって。笑顔でいろとは言わない。嫌な気分で仕事にいくのは避けたいんですよね。

安東:なるほど。まだ奥様のお話をお聞きしていない段階なので、充分な見立てとはいきませんが、ここまでお話を伺って、政彦さんと奥様が夫婦としてのコミュニケーションを改善するためには「感情」への理解がキーポイントになるのではないかと思います。

政彦:感情ですか?

「感情」への理解を深めた結果、見えてきたのは?

安東:政彦さんは「感情」への理解、言われてピンときませんか?

政彦:うーん、ちょっとピンとこないかもしれません。そもそも感情というのはどこからくるものなんでしょうか。日々のストレスですか? 暮らし方とか年数を経るごとに、変わってくるものなんでしょうか?

安東:そうですね、、政彦さんがイメージされているのは、ネガティブな感情みたいですが、ポジティブであったりネガティブであったり、そこまで強いものでなくても感情そのものは、常にあるものです。ただ、感情をキャッチするのが得意ではない人はいますし、意図的に感じないようにしているケースもあると思います。

 例えば政彦さんとは、今日初めてお会いさせていただきましたが、オンラインで男性同士だとおのずと感情は抑え気味になりやすいものです。

政彦:わかります。

安東:これがプライベートな場でも、いきなり心を開いて気持ちの話をすることはそうそうないのではないかと思います。

政彦:確かにそうですね。

(写真:Javier Zayas Photography / Moment / Getty Images)

安東:話している相手は今どういう気持ちなんだろうと確認したり、気持ちに寄り添ったり、我々男性はそもそもそういうところに無頓着ですよね。だけど女性は近況報告をし合ったり世間話を挟んだりしながら、お互いの気持ちに合わせて話をしていく感覚を持っている方が多いのではないかと思うんです。

政彦:なるほど。

安東:そもそもの話、共感や感情に寄り添うことの重要さを理解している女性は多く、いっぽうで、男性はその点、あまり得意ではなかったりします。

政彦:じゃあ、妻はそういったところが疎いんでしょうか?

安東:いえ、カウンセラーとしてはまず、「政彦さんやお子さん達に配慮できないくらい」疲れていたり、イライラや不機嫌さを隠せない程、気持ちのゆとりもないのかもな、って考えます。

政彦:隠してないですね。妻だって実家にいるときはそんな不機嫌な顔をしていないですから。

 やっぱり自宅だから、完全にフルオープンで、感情を出してきていると思います。僕は自分が機嫌が悪かったとしてもそれを出さないように接しています。そこが男女の違いなのかもしれないですね。

 なので、妻が全開で出してくる怒りを受け止めなきゃいけないというのもあるかもしれないですね。

安東:本来は感情は自分で面倒を見た方がいいんですよね。自分の機嫌を相手に委ねてしまうと、相手次第で自分の機嫌がいちいち変わってしまうことになりますから。

 基本的には自分の機嫌は自分で取るということが大切ではありますが、それができないくらい疲れていたり、気持ちにゆとりが無くなっているということもやはりあるんだと思うんです。

 そんな時には、心のバランスを取るために気晴らしも必要なのだと思いますが、小さなお子さんがいらっしゃるとそれもそう簡単ではありませんからね。奥様の様子を伺っていると、そんな状態なんだ、ということを夫である政彦さんにはわかって欲しい、という心理も働いているのかもしれません。

政彦:わかります。だからストレスもあると思うので、週末は私が子供2人を連れて、3人で遊びに行っています。妻は来なくて1人で過ごす時間が欲しいという感じです。

安東:それはあえてお子さんと3人で、ということですか?

政彦:はい、家族4人でどこかに出かけるということがほとんどないんです。そこは別に不満ではありません。週末は僕が子供の面倒を見るからその間はリラックスして欲しいなと思っていますが、妻にはなるべくストレスをためないでいてほしいなと思っています。

安東:それはお二人で話し合われてそうなったのではなく、政彦さんがそのようにしてあげているという感じですか?

政彦:そうですね、自然にそうなりました。最初の頃は面倒見るよと言って出ていくようにしていたら、それがスタンダードになって、逆に向こうが「今日連れていきなさいよ」と言うようになりました。

安東:なるほど。それは対策としては良いと思います。でも、次のステップで、お二人の関係をもう一段階良くするためには、もうひとつ踏み込んだ取り組みが欲しいですね。

政彦:はい、どうすれば良いでしょうか?

安東:おそらく週末にお子さんたちを連れてお出かけされるのは今の状態になるよりももう少し前に始まったことですよね?

政彦:はい、結構前ですね。

安東:それはその頃から、奥さまの負担が大きいなとか、ストレスが溜まっているなというふうに見えていたということですよね?

政彦:そうですね。この週末も3人で遊園地に行きましたが、妻を誘っても「人混みが嫌いだから行かない」と言うんです。

安東:まずはOKなんですが、この対策が奥様の気持ちのケアになっていない可能性があります。

 うまくコミュニケーションが取れなかったり、緊張感があるなという時には、お互いの気持ちの部分に作用するようなアプローチが欲しいところです。

 週末にお子さんと外出をするというのはすでに定番になっているようなので、中止になってネガティブな感情を引き起こすことはあっても、引き続きポジティブな感情が生まれるとは限りませんから。

政彦:なるほど。最近、不快の状態を取り除いても満足が生まれないという話を聞いたんですが、そういうことですか? 

安東:通じるところはあるかもしれません。政彦さんは、平日お仕事をされているので、土日にお子さんを連れて出かけるって結構大変じゃないですか?

政彦:僕は今子供と遊ぶのが一番の楽しみなので、まったく問題ないです。コミュニケーションの問題だけです。

安東:それはよかったです。ただ、奥様側から見たときに、もはや当たり前のことになっている可能性が高いですがどう思いますか?

政彦:母親同士でそういう話をすると、「旦那さんすごく優しいね、普通はそんなことしてくれないよ」と言われたという話はしてくれましたね。

安東:なるほど、こういう会話ってどちらとも取れるので細かなニュアンスが分からないと何とも言えないところはあるんですが、ひとまずポジティブに捉えられている、として、更に、気持ちのモヤモヤやわだかまりを解消し良好なコミュニケーションに建て直していくには、お互いに今思っていることや感じていることをきちんと伝えあうことが必要なのではないかと思います。そのためにも何かきっかけになることがあると良いんですが、何か考えられますか?

政彦:来月が結婚記念日なんですが、祝うという気持ちがわかないなって昨日の夜実感したんです。

 去年は10周年だったのでホテルのレストランに行ったり、毎年どこかで祝っていたんですが、祝うという感情がなくなってきたのはまずいなと思いました。

安東:そうでしたか、だとしたら、政彦さんも気持ち的に少なからず傷ついているということだと思います。

政彦:そうかもしれないですね。まだ妄想ですけど、子供が独立したら、別居して1人で暮らした方がお互いに幸せなのかなぁなんてふと考えたりはしますね。

 でも、子育てが終わったら2人しかいないので昔みたいにまた関係が良くなるという可能性もあるので、どうなるかはわからないですけど。もう少し子供が大きくなったら余裕が出てきて、夫婦仲も改善する可能性もあるんじゃないかなって。元々は悪くなかったんで……。

 時間の問題なのかもしれないなとも思いますね。【次回に続く】

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