今年9月に閉幕したパリオリンピック・パラリンピックでは、多くの雄姿が伝えられる一方で、アスリートへの誹謗中傷が問題になった。

どうすれば誹謗中傷は減るのか。

シドニー五輪競泳日本代表で、現在は日本知的障害者水泳連盟副会長職をはじめスポーツや教育分野を中心に多岐にわたる活動を行っている萩原智子さんはXで誹謗中傷について言及。

9月4日行われたLIVE配信でも、現在の活動や過去の病気、アスリートのメンタルのほか、自身の経験から誹謗中傷を受けたアスリートがどう思うのか、何が救いになったのかについてお話しいただいた。

今回はその中から、誹謗中傷をなくすために意識すること、子どもが人を傷つけないために親ができることについて紹介する。

(本稿は動画【シンクロLive・萩原智子】オリンピック4位の私が伝えたいこと 一生懸命の先にあったパラレルキャリアを編集した全2回の1回目)

オリンピック選手たちへの“誹謗中傷”の問題を考える

 パリオリンピック・パラリンピック。今回も本当に素晴らしい戦いの数々でした。

 もちろんメダルの数だけで評価すべきではないと思うのですが、海外で開催されるオリンピックでは最多のメダル数という好成績を出し、記録にも記憶にも残る大会になったと思います。

 一方、さまざまな激戦が繰り広げられている裏側で、私には見過ごせない“問題”もありました。それが、選手たちを誹謗中傷するSNSなどでのコメントです。

 一生懸命に練習をして競技に出場している選手たちに対して心ない言葉が投げかけられていて。なかには、パリオリンピックに出場していない私にまで、過去のオリンピックの成績に触れ、「4位のくせに解説するな」「4位のへたれ!」など、SNSのDMで批判的なコメントが寄せられました。

 私はこれまで生きてきた経験から、少しの誹謗中傷を受けても乗り越えられるスキルを身につけてきましたが、現地で真剣に戦っている選手たちが批判的なコメントを目にしてしまったら、アスリートたちはどんな想いをするのだろうか。

 そう思うと居ても立ってもいられなくなり、私もSNSで誹謗中傷に関して発言してしまうほどでした。

 人によって応援の仕方も十人十色なので、厳しい言葉を投げかけたくなる人もいるとは思います。でも、やはり自分がされて嫌なことは人にもしない。相手がどう思うかを考えて発言するって、シンプルですが大切なことですよね。

 自分が現役だった時代に比べて、応援してくれる人たちの声が届きやすくなった一方、同時に選手たちを傷つけるコメントも世の中に出回りやすくなっている。

 これは、まさにSNSの光と影だと思います。

 今は選手たちに直接メッセージが届けられる環境なので、ポジティブな言葉を投げかけた方が、お互いに気持ちよくオリンピックを迎えることができる。これからは、そんな大会にしていけるように、みんなで考えていくべきではないでしょうか。

 そしてアスリートや競技の魅力はもちろんですが、それ以上のスポーツの価値を作り出せるようスポーツ界でも努力しなければならないことでもあると思います。

他人を誹謗中傷しない子供を育てるには

LIVE配信では、子育て、メンタルコントロール術、多岐に渡っている現在の活動をはじめ、萩原さんが出版した絵本について、出版のきっかけや経緯についてお話いただきました。

 なぜ選手たちを誹謗中傷する人たちがいるのか。

 この問題を考えた時、私は“自分を認めてあげること”が、重要なカギになってくると思います。相手をちゃんと認めてあげるためには、まず自分自身を認めてあげる必要があるのではないかと考えています。相手を攻撃してしまうのは、その裏返しのように見えてしまうんです。

 他者を批判する前に、まずは「ありのままの自分を自分自身が理解し、認める」自己受容ができれば・・・と思います。

 ではどうすれば自己受容できるのか。自分自身についてもそうですが、母親として、子どもが自己受容できるようになるにはどうすればいいのかをずっと考えてきました。

 そこで心掛けているのは、子どもが失敗してしまったとき、なぜ失敗してしまったのかを一緒に考えるようにしています。子どもがその原因に気が付いた後、私はそれでも「あなたが大切で大好きだ」と伝えています。

 加えて、子どもの前で他の人を“褒める”ことです。「この人はこんなことができたんだ!」や「自分の目標を達成できてすごいね!」とテレビを見ながら褒め讃える姿を見せています。

 他にも、学校で子どものお友達が代表で発表をした時や、功績を残して表彰された時には、「すごく緊張したんだろうね。でも、最後までがんばったんだ!」と子どもと一緒にお友達の良いところを見つけるようにしています。もちろん自分自身の子どもががんばった時も同じようにしています。

 その結果かどうかはわかりませんが、約1年前、柔道でなかなか一回戦突破できない息子は、同級生が試合で優勝した時、観戦席で誰よりも大きなガッツポーズをしていました。

 これには私自身も感動しましたし、息子ながら心から尊敬しました。すべての自分を受け止めることができれば、次第に他の人を認められるようになるんだと、息子から教えてもらった気がします。

 もちろん、私も子育てに関しては初心者なので、いつも悩みながら子どもに接しています。でも、子どもの育て方に決して“正解”はないので、時にはお友達に助けてもらいながら取り組んでいけばいいと思います。(文・坂本遼佑)

萩原智子さんLIVE配信のアーカイブを配信中。動画はこちら↓