楽天イーグルスの監督に就任したのが38歳のとき。球団史上最年少での抜擢にこたえクライマックス・シリーズに進出した。以降、常勝・福岡ソフトバンクホークスの1軍コーチとして選手の成長を手助けしているのが平石洋介だ。「野球をもっと楽しむ場所を作る」ことを目指した「オンラインBASEBALL PARK」では「教える」ー「教えられる」の関係の要諦を、実際の過去のシーンから伝えるコンテンツを配信する。ここでは、その平石が持つ指導哲学を紹介する。
僕の一言が選手の人生を変えることがある
現役を引退して早10年のときが過ぎようとしています。第二の野球人生を指導者として歩ませていただく中で、いろいろと感じることも増えてきました。
コーチの仕事には、チームが勝つため、選手が一歩でも上のレベルにステップアップできるための責任が伴います。
選手には人生がある。
僕の一言が、彼らの未来を変える可能性がある。
だから選手のことをもっともっと知らねばならないと感じています。
現役を引退したのが2011年の秋。すぐにコーチとなり、選手たちに「責任」を持つ立場になりました。一昨年のシーズン途中からは、監督としてチームにも責任を果たさなければならない経験もさせてもらいました。
その中で感じることはコーチ、指導者として「伝える」「教える」ことの難しさです。これは、少年野球であろうが、プロであろうが、はたまた野球以外のスポーツであろうが変わらないことではないでしょうか。僕は経験をしたことがありませんが、ビジネスパーソンにとってもそうなのかもしれません。
これまでの野球人生で経験したさまざまなことから、「伝える」「教える」つまり、指導者として大事にしていることがあります。
それは「実際にこうなっている、ではなく、なぜそうなるか」にベースを置く必要がある、ということです。
例えば、みなさんもこれまでの人生の中で「集中しなさい」と言われたことがあるのではないでしょうか。そのとき、どんな気持ちになったでしょうか?
「集中してるよ」「しようと思ってるよ」
そう思ったことはないでしょうか。
指導者の伝える「言葉」は、この「集中しなさい」と同じように「あなたはこうなっているよ」という指摘に終始していることがほとんどです。「そう見える事実」を言っているだけ。
もちろん、指摘した人が正しくて本当に集中していなかった人もいるかもしれませんが(笑)。
でも、よく考えてみてください。
これって誰でも言えることではないでしょうか?
「集中していない」人に対して、「集中しないさい」。そんなことは見ればわかるのです。
先ほども書いたように、指導者に求められていることは「責任」です。つまり、誰でもできることをやっていては意味がありませんし、「責任」を果たしてるとも言えない。
必要なことは、「なぜ集中できないか」というそもそもの視点に立つこと。
集中できない理由は無数に考えられます。それまでに数時間集中していた。ほかに悩みがある。寝不足である。そして、そのそれぞれの理由によって、集中するための解法は変わってきます。
ずっと集中してきたのであれば、ちょっと休憩を入れる。悩みがあるなら、まずそこを取り除く、寝不足なら切り上げさせる・・・などなど、挙げればきりがありません。
これが「実際にそうなっている、ではなく、なぜそうなるか」という基本です。
選手との距離感を細かく変えながら「すべきこと」を整理する平石指導理論を紹介。例えば、栗原陵矢が放ったホームラン、それまでに取ったアプローチはどんなものだったのか?
「なぜ」を考えると「どうして」が分かる
この大事さは、プロ野球の現場においても強く感じています。良し悪しは別として、現実として「そうなっている」ことばかりを指導するコーチは多い。
例えばバッティングにおいて「体が開いてはいけない」という鉄則があります。
これを「体が開いているぞ」というだけの指導者がいたとすれば、それは「誰にでもできる」ことをしていることに他なりません。解説者でも、野球をしたことのない人でもわかることです。
なぜ、体が開くのか。タイミングの取り方が問題かもしれないし、体の使い方の問題なのかもしれない。原因はさまざまに考えられます。
選手のスタイルや育ってきた環境、長所、短所、いろいろなことが積み重なって「体が開いている」状態になっているわけです。
なぜ、開いているか。
それを指導者は一緒に考えることが仕事です。
さて、冒頭に僕は「まだまだ選手のいろんな部分を知らないといけない」と言いました。その理由は、この指導の鉄則にとって、知ることが不可欠だからです。
まずなぜ体を開くか、と考えるときに、その選手を知らなければ本質的な原因は見つけられません。加えて、それを知ったうえで、「伝え方」「教え方」そしてタイミングが決まってきます。
体を開く、という悪癖があったとして、今、直すべきことなのか。
1年目の選手であれば、プロに入団できた理由がそこにあったのかもしれません。
5年目で1軍と2軍を行ったり来たりの選手であれば、もう時間がないかもしれません。
いずれも選手のことを知ることなく、進められることではありません。
僕はイーグルス時代、年齢が若いから選手と距離が近いとよく言われましたが、知らなければ指導ができない、という思いが結果としてそういう「距離」に見えたのかもしれません。年齢は関係ないと思ってます。
これも、距離が近いことが大事なのではなく、なぜ近いのかを考える必要があります。
もちろん、僕の考えは絶対ではなく、これもまたいくつかある方法論のひとつですから、そういう指導者を一概に批判すべきではありませんが、その方法論ばかりが覆ってしまうとすれば、危機感を覚えます。
指導者、コーチの責任を果たすために重要な条件だと思っています。
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