10試合目のリーグ戦初勝利
リーグが開幕して9試合、僕たちシュツットガルトは苦しい時間を過ごしていました。
「PICKUPMATCH」でもお話した開幕のライプツィヒ戦で引き分けると、4分け4敗。
2020年12月の2部時代から一緒に戦ってきたマタラッツォ監督は解任されることになりました。
多くのことを教えてくれた監督で、僕のサッカー人生にとってかけがえのない存在です。例えば戦術。システムを変えるだけで試合展開がこんなにも変わるのか、と驚いたことは何度もあります。
キャプテンに選んでくれたときには戦い方について意見を求めてくることもありました。そんな監督はこれまで出会ったことがなかったので、信頼を強く感じたことを覚えています。
なかでももっとも大きかったのは、僕自身の可能性を伸ばしてくれたことにあると思います。異国の地でのキャプテンもそうですし、アンカーというポジションを任せてくれたのも彼でした。
それだけではなく、昨シーズンは多くの試合でもう一つ上のポジションであるインサイドハーフを務めました。数年前まで想像もしなかったポジションでのプレーは、僕のサッカー選手としての幅を広げてくれ、そして長所やこれから必要な課題をはっきりと示してくれた。
その点で、自分では気づかない可能性に出会わせてくれたと言えます。
チームの不振は決して監督だけの責任ではありません。プレーするのは選手であり、勝敗を決めることができるのもピッチ上に立つものだけです。
その点ではキャプテンとして選手として責任を感じています。
この9試合の間には、僕自身、ケガをして途中交代をすることもありました。幸い、その後のポカールを含めた3試合は先発に戻れるくらいで、軽傷ではありましたが、もう1試合早く、勝利を届けることができれば監督は変わらずに済んだかもしれない……そう思うと、申し訳ない思いもあります。
ただ、僕たちはいつまでもくよくよしているわけにはいきません。彼が作ってきたシュツットガルトのサッカーを、記憶のなかで学び直しながら、勝たなければ僕たちの未来もまた、大きく変わってしまう。
これからまだシーズンは続きます。勝ち点を積み重ねて、昨シーズンのような残留争いに四苦八苦することがないようしていきたいと思います。
監督交代で何が変わったのか
監督交代がカンフル剤になったのかもしれません。
選手たちに責任が芽生え、チームはボーフム戦で4対1の初勝利、ポカールでもビーレフェルト相手に6対0と大勝することができました。
僕自身も2戦連続でゴールを決めることができて、チームの勝利に貢献できたことをポジティブに捉えています。
サッカーの難しさが詰まった数週間だったと思います。
マタラッツォは非常に緻密にゲームプランを立てます。その中で僕も頭をフル回転させながら、いいポジション、立ち位置を模索していました。
けれどその監督が変わり(アシスタントコーチのヴィマーが暫定監督として指揮を執っています)、攻撃において何かを大きく変えたわけではありません。むしろ彼はチームの「戦う姿勢」を問い直し、守備の部分の立て直しを図りました。
一つのプランが、一昨シーズンのメインのシステムに戻したことです。
僕はインサイドハーフから再びアンカーとなり、その結果として2試合連続でゴールを決めることができています。
チーム状況や選手のコンディションなど多くのことを計算に入れながら、取っていた戦術がうまくいかず、シンプルにかつてのやり方に戻しただけで、結果が出たのです。
もちろん当時はプレーしていない若い選手も多くいます。それでも、「原点回帰」とも言えるやり方がいい方向に向かっていることに、やっぱり「最適解」を探し続けなければいかないと痛感しています。
次節は強豪・ドルトムントとの試合です。ポカールから中2日でコンディション的な部分でもしっかりと調整をしなければいけません。
アウェイゲームで、この2試合のいい雰囲気をしっかりと出していきたいと思っています。
中村俊輔選手の引退
この間には、ひとつびっくりしたニュースがありました。それは中村俊輔選手の引退。
先月「憧れの人」として対談をさせていただきました。小さいころからの憧れ、いつか一緒にプレーができたら、なんて夢想をしていた存在。
お話を聞いたときも、言葉の一つ一つに重みがあり、選手として日本代表として多くのことを学ばせてもらいました。
これからもサッカー界に携わられると思います。その姿はいつまでも憧れであることに違いはありません。
本当にお疲れ様でした。
スペイン代表・ダニオルモとマウスピース
今月、先月と「PICKUPMATCH」で「PICKUPDUEL」と題して一人の選手との「対決」についてもお話しています。初回がライプツィヒに所属し、スペイン代表の中心選手であるダニ・オルモについて。今回はシャルケに移籍して、日本代表のキャプテンでもある(吉田)麻也くんについて話をしています。
また「1/12」では「マウスピース」秘話を、作ってくださっている宮川先生と話ています。ぜひそちらも見てみてください。
と、告知っぽくなってしまったのでもうひとつ。イベントのときにも話させてもらいましたが、ついに本が完成しました。タイトルはずばり「DUEL」(デュエル)。
表紙はこんな感じです。
11月5日に発売予定ですのでご興味があればぜひご覧ください。
有隣堂書店ららぽーと湘南平塚店さんではポストカード特典もあります。
ワールドカップも着々と近づいてきました。サッカーに興味を持ってくれる人も増えると思います。この本や「月刊・遠藤航」のコンテンツがその人たちの助けになればよりうれしいです。
聞きたいことなどあれば、どんどんお寄せください。
それではまた次回「PICKUPMATCH」で!
遠藤航