折茂武彦(おりも・たけひこ)B.LEAGUE(B1)レバンガ北海道の代表取締役社長。1993年にトヨタ自動車(現アルバルク東京)でキャリアをスタートし、2007年にレラカムイ北海道へ移籍、その後経営難によりチーム消滅。2011年にレバンガ北海道を創設し、選手兼代表を務める。2019−20シーズンで引退した。190センチ77キロ。(写真:花井智子)

 

 B1リーグレバンガ北海道の創設者であり社長としてもバスケットボール界を牽引し続けた折茂武彦。

 帰化選手を除く日本人初の10000得点や日本代表で活躍した折茂は、日本バスケットボール史に残る「スコアラー」である。
 
 美しいと言われるそのシュートフォーム。しかし折茂自身はそれを否定した。むしろ、重要なことは「美しさ」ではない、と。そこにある信念とは?

 選手としてだけではなく、レバンガ北海道のクラブ創設者であり経営者でもある折茂による「ものの見方」とは。 

 昨年10月に上梓し話題となった初の著者99%が後悔でも。からヒントを探る。

繰り返した「素振り」が作ったフォーム

 実はわたしのシュートフォームは独特だ。

 身につけたのは、高校時代である。

 スリーポイントゾーンから、約6メートル先にあるゴールをイメージする。腕をL字型にしてセットポイント(ボールを構える位置)に入る。 

 腕は前後に振るのではなく、上方向に伸ばす。最後に手首を返し、人差し指と中指で押し出す――。

 だが、ボールは持っていない。行なっているのは、野球で言う素振りだ。

 当時、自宅でひたすらこれを繰り返していた。帰宅する前の部活では、1日500、600本のシューティングは当たり前。だから当然、腕が疲れてくる。

 それでも素振りを続ける。だんだんと手が上がらなくなってくる。

「疲れた。もうダメだ。これ以上、上がらない」

 無意識に手が下がる。

 そのポジションこそが、自分にとって一番楽で、理想的なセットポイントだった。実際にその位置から打ってみると、力まずに、自然とシュートの距離を伸ばせるのだ。

万人に正しいものは存在しない

 そのセットポイントの位置が、人とは少し違っていた。

 日本人には、額ひたいの前や頭の上にボールをセットしてシュートを打つ選手が多い。だが、わたしは顔の横、右側の眉毛に右手の親指が当たるくらいの位置からボールを出す。基本と言われる体の正面にセットすると、ものすごく違和感がある。顔の横が一番、楽で「カチっとハマる」ポイントだ。

 もし、「体の正面にセットして打て」と矯正されていたら、おそらく日本大学でキャプテンになることもなければ、インカレでMVPを獲ることもなかっただろう。

 逆に、このフォームでほかの選手が打っても、いい結果は望めないだろう。

折茂武彦・著「99%が後悔でも。」

 これはわたしの体、わたしの特性だけに適しているフォームだからだ。

 それぞれの形、それぞれのやり方でやればいい。翻ってそれは、「正しい形」「正しいやり方」などないことも示している。

 バスケットボールに限ったことではない。自分だけの「何か」を見つけ、それを磨き上げていけるかどうか。

 誰かの真似をしてもダメだし、他人に「自分の形」を見つけてくれというのも無理な話だ。

 自分自身で考え、行動し、見つけていく――。その繰り返しが重要だ。

99%が後悔でも。折茂武彦・著より再構成)