B1リーグレバンガ北海道の創設者であり社長としてもバスケットボール界を牽引し続けた折茂武彦。
帰化選手を除く日本人初の10000得点や日本代表で活躍した折茂は、日本バスケットボール史に残る「スコアラー」である。
美しいと言われるそのシュートフォーム。しかし折茂自身はそれを否定した。むしろ、重要なことは「美しさ」ではない、と。そこにある信念とは?
選手としてだけではなく、レバンガ北海道のクラブ創設者であり経営者でもある折茂による「ものの見方」とは。
昨年10月に上梓し話題となった初の著者『99%が後悔でも。』からヒントを探る。
繰り返した「素振り」が作ったフォーム
実はわたしのシュートフォームは独特だ。
身につけたのは、高校時代である。
スリーポイントゾーンから、約6メートル先にあるゴールをイメージする。腕をL字型にしてセットポイント(ボールを構える位置)に入る。
腕は前後に振るのではなく、上方向に伸ばす。最後に手首を返し、人差し指と中指で押し出す――。
だが、ボールは持っていない。行なっているのは、野球で言う素振りだ。
当時、自宅でひたすらこれを繰り返していた。帰宅する前の部活では、1日500、600本のシューティングは当たり前。だから当然、腕が疲れてくる。
それでも素振りを続ける。だんだんと手が上がらなくなってくる。
「疲れた。もうダメだ。これ以上、上がらない」
無意識に手が下がる。
そのポジションこそが、自分にとって一番楽で、理想的なセットポイントだった。実際にその位置から打ってみると、力まずに、自然とシュートの距離を伸ばせるのだ。
万人に正しいものは存在しない
そのセットポイントの位置が、人とは少し違っていた。
日本人には、額ひたいの前や頭の上にボールをセットしてシュートを打つ選手が多い。だが、わたしは顔の横、右側の眉毛に右手の親指が当たるくらいの位置からボールを出す。基本と言われる体の正面にセットすると、ものすごく違和感がある。顔の横が一番、楽で「カチっとハマる」ポイントだ。
もし、「体の正面にセットして打て」と矯正されていたら、おそらく日本大学でキャプテンになることもなければ、インカレでMVPを獲ることもなかっただろう。
逆に、このフォームでほかの選手が打っても、いい結果は望めないだろう。
これはわたしの体、わたしの特性だけに適しているフォームだからだ。
それぞれの形、それぞれのやり方でやればいい。翻ってそれは、「正しい形」「正しいやり方」などないことも示している。
バスケットボールに限ったことではない。自分だけの「何か」を見つけ、それを磨き上げていけるかどうか。
誰かの真似をしてもダメだし、他人に「自分の形」を見つけてくれというのも無理な話だ。
自分自身で考え、行動し、見つけていく――。その繰り返しが重要だ。
(『99%が後悔でも。』折茂武彦・著より再構成)