近年、耳にするようになった“夫婦カウンセリング”という言葉。海外ドラマはもちろん、日本のテレビドラマでも、夫婦カウンセリングのシーンが登場するようになりました。

「夫婦の問題」をカウンセリングで解決するって、私たちにもできるのでしょうか。

 今回は、約2000組の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』や、オンラインコンテンツ『夫婦リカバリー相談室』の配信などで注目を集める夫婦カウンセラー・安東秀海氏になかなか聞けない「夫婦カウンセリング・15の疑問」に答えてもらいました。

取材・文=吉田彰子

安東秀海さん
心理カウンセラー

心理カウンセラー養成スクールの講師を経て2015年に独立、夫婦関係を専門とするカウンセリングオフィス『Life Design Labo』を開設。機能不全に陥った夫婦の関係性を読み解き、健全なパートナーシップ構築へと導くことを得意とする。著書に『夫は、妻は、わかってない。』がある。
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変わり始めた夫婦の問題

Q1.夫婦カウンセリングは、どこで生まれたものですか?

 カウンセリングや心理療法の多くはヨーロッパで始まりアメリカで発展したものが多いのですが、1940年代のアメリカやイギリスには、すでに今の夫婦カウンセリングの初期形態といえるものがあったようです。 

Q2.海外ドラマや海外の映画ではカップルセラピーがよく登場しますが、日本ではいつごろ定着しましたか?

 今も定着したと言えるかわかりませんが(笑)、夫婦関係を対象とするカウンセリングは、ずっと以前からありました。ただ「夫婦カウンセリング」という名称が見られるようになったのは、最近かなと思います。

 私と妻がLifeDesignLaboを開設したのが2015年なんですが、その時は「夫婦カウンセリング」ではなく、「夫婦やカップルのためのカウンセリング」と言っていました。当時はまだ、「夫婦カウンセリング」と表記されているところは、あまり見られなかったように思います。

 「夫婦カウンセリング」というキーワードが頻繁に使われ始めたのはここ5、6年なのではないでしょうか。

昨年からはじめた「夫婦リカバリー相談室」では、多くの夫婦から疑問が寄せられている。

Q3.「夫婦カウンセリング」というワードが一般化して、カウンセリングに来る方に変化はありましたか?

 全体像はわかりませんが、私たちの肌感覚では夫婦カウンセリングが記事(👉「夫に早くあの世にいってほしい」妻が夫婦カウンセリングを受けてみたを読む)化されたことで、大きな変化があったように思います。

 それまでは夫婦関係のご相談でもカウンセリングにお越しになるのは、女性が多かったんです。浮気やセックスレスなど、問題を感じている女性がまずご相談に来られて、その後、夫を交えてカウンセリングに繋がっていく形ですね。それがあの記事をきっかけに、初回からご夫婦でいらっしゃるケースが増えましたね。

「夫婦カウンセリングは調停みたい」と思う人が多いわけ

Q4.日本には「夫婦喧嘩は犬も喰わぬ」なんてことわざもありますが、夫婦のことを第三者に話すのは“恥“と思われる方は多いのでしょうか?

 もちろん一概には言えないのですが、“恥”という概念があるのは、比較的シニア世代が多いかなと思います。

 カウンセリングのコアユーザーである30~40代の方では大きく2つに分かれいて、恥とは思っていないけど「夫婦のことは当事者にしか分からないのでは?」と考える方と、「二人で解決できないなら、プロの手を借りるのは自然なこと」と考える方があるように思います。

Q5.夫婦カウンセリングの内容はカウンセラーによって変わるものなんですか?

 他のカウンセラーさんが実際にどのようなカウンセリングをされているのかは分からないのですが、お客様のお話を聞いていると、どちらかと言えば調停的なアプローチをされているケースが多いのかもしれません。

 夫婦カウンセリングでは対立する意見を伺いながら仲介的に介入していくケースも少なくはないのですが、私たちのカウンセリングでは対立の原因になっている関係性の改善を目指しています。

 私も妻もともと夫婦カウンセリングに特化していたわけではないので、ベースになっているのは個を対象とする心理カウンセリングなんです。

 まず夫側、妻側それぞれのお話を伺いながら、夫婦として機能不全を起こしている構造的な問題を見つけて改善のためのアプローチを考えていきます。

Q6.安東先生のカウンセリングを受けるご夫婦は、どこにお住まいの方が多いですか? また、どの年齢層の方が多いですか?

 開設当初はカウンセリングルームにお越しいただくことが前提だったので、東京都内なかでも渋谷区や新宿区の方が多かったように思います。コロナ禍を経てオンラインカウンセリングへの障壁が下がったことで首都圏に広がりました。最近では、日本全国から、リモートだけでなく実際にご来談になる方も多くなりました。 

 年代としてはは、8割が40代と30代の方です。50代の方が1割、20代の方も増えている傾向で同じく1割くらいいらっしゃいます。

Q7.夫婦カウンセリングは夫婦二人で受けるものですか?

 カウンセラーさんにもよるのかもしれませんが、私たちの場合、夫婦間のお悩みに関するご相談であればご夫婦であってもお一人であっても問題ありません。まずひとりで、ゆくゆくは夫婦でカウンセリングを受けたいと考えられている方も多いですね。

〈後編〉夫婦カウンセラーに聞く! 「夫婦カウンセリング」に向いている人、向いていない人。

記事:妻に家事育児の一切を任せていた夫。破綻した夫婦関係を修復するため考えるべきことは?