ニューヨークからお届けする金曜日。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

“「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる”

見出しにあるこの言葉、どこかで耳にした覚えがある方もいるのではないでしょうか。

バスケットボール漫画の名作『SLAM DUNK』に登場する絶対王者・山王工業高校が、主人公率いる湘北高校に敗れたときに、山王工業高校の監督が部員たちにかけた言葉です。

『吹部ノート 12分間の青春』にも大きなドラマがありました。

第72回全日本吹奏楽コンクールに出場した八王子学園八王子高校は、全国大会で初の金賞を受賞しました。

しかし、それ以前に彼らは大きな壁を乗り越えてきました。

東京都吹奏楽コンクール。全国大会に出場できる代表になれるのは2校。それまで八学は3大会連続の都大会止まり。東海大学菅生高校と東海大学付属高輪台高校が彼らの前に立ちはだかっていました。

「精いっぱい頑張っても叶わないことってあるんだな……」「できる限りの努力はしている。でも全国には行けないんだ」

八学の部員たちがそう思うほど、その2校は大きな存在だったのです。

その一方で、全日本吹奏楽コンクールで、2018年からは5大会連続(コロナ禍でコンクールが中止となった2020年を挟む)で金賞を受賞。全国大会常連の東海大学菅生高校吹奏楽部が、代表に選ばれず涙をのみました。

もちろん本来、音楽は勝ち負けをつけるものではありません。

しかし、青春のすべてをかけて吹奏楽に打ち込んできた彼らにとって、そんな言葉は慰めにはならないでしょう。部員たちはどれだけ悔しい思いをしたでしょうか。顧問の加島先生もその気持ちを痛いほど理解していたと思います。

けれど、冒頭の言葉のように、この敗北は必ず人生の大きな糧になるはずです。

『吹部ノート 12分間の青春』では、東海大学菅生高校のエピソードも掲載しています。読んでいただければ、部員たちが吹奏楽を通して、どれだけ成長していったかがわかるはずです。

吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけた...続きを読む

4月27日には、東海大菅生高校吹奏楽部の定期演奏会があります。3年生は卒業しましたが、その想いを引き継いだ部員たちの演奏を聞いてみてはいかがでしょうか。

全日本吹奏楽コンクールも2025年のシーズンが始まっています。シンクロナス連載の『吹部ノート』は、引き続き、吹奏楽にかける高校生による青春ドキュメンタリーをお届けします。

5月には、2025年最初の取材予定校も発表します。乞うご期待。

編集・雪