Q.筋肉量を増やしながら俊敏性を維持するには?
ピッチ以外で素顔を大公開。1/12、2回目のテーマは「トレーニングする遠藤航」。現在ではブンデスリーガ・デュエルキングとしてフィジカルが強いイメージが定着した遠藤航だが、普段彼はどのような意識をしてトレーニングしているのか?
パーソナルトレーナーである小林氏との対談。小林氏は、サッカー経験のない元五輪代表選手。その種目とは……デュエル王の秘密。総再生時間:59分]
(聞き手:シンクロナス編集部)
中断期間を経て再開したブンデスリーガ。サッカー日本代表の中心選手でもある名門シュツットガルトの主将・遠藤航にとっては、久しぶりの「休暇」だった。
すっかり「デュエル」が代名詞となった遠藤だが、最近は「タフネス」ぶりに注目が集まっている。
ドイツ紙ビルトは、「あとどのくらいのパワーがあるのか?」(9月)、「彼の筋肉は機械ではない」(11月)、「時々、怖くなって、故障しなければいいなと思うことがあるんだ」(12月)と、数回にわたって遠藤が試合に出続けていることに言及した。
その傑出ぶりはデータに表れており、世界で最も注目されるサッカーサイト「トランスファーマーケット」によると、2021年、世界の1部リーグでプレーする選手の出場試合数では1位タイの31(今季のリーグ戦と年内の代表戦を集計)だった。ちなみに1位は遠藤を含めた3人で、もう一人はビルバオ(スペイン)のGKサイモンと、吉田麻也だ。出場時間で見れば、サイモンに続く2位となる。
さらに遠藤の場合、一昨年の2020年も48試合に出場し、4177分を戦った。これは日本人トップの数字である。
この話題に拍車をかけたのは遠藤の休養の少なさも要因だった。欧州でプレーする多くの選手にとって唯一の長期休暇となる5~7月にかけて、日本代表、東京五輪のOA枠とフル稼働。合計13試合を戦い、直後にドイツへ帰国。わずか2日後のリーグ開幕戦にスタメンフル出場している(ちなみにその試合では決勝ゴールまであげてみせた)。
五輪に二度出場したボブスレー選手と契約
代名詞の「デュエル」も健在で、勝利数は今季もリーグ3位である。
屈強な海外の選手たちに「1対1(デュエル)」で勝ちながら、これだけのプレー時間を確保できる「タフネス」の秘密はどこにあるのか。
その答えは、遠藤本人が昨年の11月に始めたコンテンツ配信「月刊WATARU ENDO」のなかで明かされている。
「月刊WATARU ENDO」の「1/12」という企画では、ピッチ以外の遠藤がどのようなメンタリティ、考えを持っているかを紹介しているが(もう一つの企画は、PICK UP MATCHとして、実際の試合について戦術ボードを使ってその意図を説明するものだ)、第二回「トレーニング」編では、実際のトレーニング映像のノーカットバージョンとパーソナルトレーナーの小林竜一氏との対談を配信。
トレーニングとその意図が非常によくわかるコンテンツに仕上がっている。
そんな中でも興味深いのが、専属パーソナルトレーナーである小林竜一氏のプロフィールだ。多くのサッカー選手が、知り合いのサッカー選手の紹介を通じて、パーソナルトレーナーを選ぶが、遠藤の場合は違う。
小林氏はボブスレー競技で二度、五輪に出場した選手で、それ以前は投擲競技(円盤投げ、ハンマー投げ)中心に活動していた。サッカーについては、ある意味で門外漢である。
なぜ、そんな選手に?
小林氏にトレーニングをお願いしたいと思った理由を、遠藤は【月刊WATARU ENDO「僕が元ボブスレーの選手とともに「筋トレ」をする理由」】の中で、こう語っている。
遠藤 (小林さんとの)最初の出会いは、鳥取に住んでいる僕の語学の先生からの紹介でした。海外に移籍して、(チームの練習以外に)自分でプラスαのトレーニングをしたいと考えたとき、その先生が「鳥取に、フィジカルお化けがいるよ」と(笑)。
小林 はははは。海外移籍の直前……2018年くらいですかね。
「体重があっても速く走れるはず」
遠藤 (浦和のときに)試合を見に来てくださって、試合後にお話をして、体を見てもらった。でも、そこから僕が海外に移籍して、実際に会ったのは……その1回と五輪前の1回、計2回ですよね。
小林 まったく会ってないですね(笑)。
遠藤 ずっとオンライン上でしか会ってなくて(笑)。1回しか顔を見ていないのに、トレーニングをし続けるっていうのが1年半くらい続いたわけですよね。
小林 そうですね。
遠藤 本格的にトレーニングを始めさせてもらったのが、シュツットガルトに来てからです。
小林 完全なオンライントレーニングをガンガンやり始めたのは、1部に昇格してからで、それまでは不定期にやっている感じでした。僕はもともと、ボブスレーで五輪に二度出場していて、サッカーをやっていたわけではありません。引退後、フリーでトレーナーとして活動していて、遠藤選手が話したような経緯で、トレーニングを見ることになったわけです。
遠藤 ボブスレーって、身体能力が高くないとできないんですよ。小林さんのすごいところは(首都圏ほどトレーニング環境が整っていない)鳥取にいながら、トレーニングのほとんどを自分で学ばれて、五輪にまで出たっていう部分。
体重が100キロくらいあって、50メートルを6秒台で走っていたんですよね?
小林 そうですね。2010年のバンクーバー五輪の頃が僕のピークだったなと振り返って思うんですが、その頃、体重がMAX114キロあって、50メートルは6秒フラットで走れていました。
専属のトレーナーもいなかったですし、アスリート専業でやれていたわけではないので、ない時間のなかで、自分で考えながらトレーニングする。いいと聞いたものをどんどん試しては、合ったものを取り入れていく、自分で考えてやっていくという感覚でした。
遠藤 だから説得力がすごいんです。特に、サッカー選手って重りを持ったトレーニングをする、しないで好みがわかれることが多いんですけど、僕はやったほうがいいな、と思っています。
重要なことは「単純に重いものを持つトレーニングをする」わけではなくて、「実際のピッチ上の動きに合わせてトレーニングをする」。小林さんとそのためのトレーニングを続けています。
小林 トレーニングの考え方が非常に重要で、サッカーにおいて、例えばスクワットを100キロ持った状態で何秒も我慢するシーンは存在しないですよね。
いかにピッチの動きに即して、鍛えるのかが重要です。
28年目でもっとも「いい状態」になっている
小林とのトレーニングを通して、遠藤が得たものの一つが世界トップレベルの「1対1(デュエル」能力であり、「タフネス」だった。遠藤は言う。
「最近『体は大丈夫か?』と言われることが増えたんですけど、(このトレーニングを始めて)少なくとも、昔のように乳酸が溜まっているな……というタイプの疲労を感じることは圧倒的に減りました。今、28歳ですけど、これまでの人生で一番いい状態だし、まだ伸びる感覚がある」
世界で勝つためにはどんなプレーが必要か。そのためにどういうトレーニングが効果的か。先入観で判断することなく、必要なパートナーを見つけた遠藤の思考がもたらした結果である。
リーグ再開、そして今月末には「負けることの許されない」カタールワールドカップアジア最終予選の正念場を迎える。
デュエルとタフネスを兼ね備えたファイターに注目が集まる。
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