「新米チェアマンのストーカー力から生まれた、Jエリートプログラム誕生秘話」
(再生時間:42分03秒/聞き手:シンクロナス編集部)
岡崎慎司、聞く。
今回の「Dialogue w /~世界への挑戦状」は、元Jリーグチェアマンの村井満さんにご登場いただきました。
「岡ちゃん、元気かい!?」
そんなフランクな口調で、いつも声をかけてくれます。インタビューでも話していますが、村井さんはJリーグという大きな組織のトップに立つ方なのに、レスターにいた頃はお食事させていただくなど、とにかく選手との距離感がすごく近い方です!
海外でプレーしている人たちの経験や意見などをもっとJリーグにフィードバックすればいいのにーー。そんな気持ちをずっと持っていたこともあって、選手の気持ちを理解してくれる村井さんはとても貴重でした。
そんな村井さんが、日本サッカーを強くするためにどのような改革をしてきたのか、そしてこれからどんなチャレンジしていくのか。いろんなお話を聞かせていただきました。
ちょうどJリーグは今年で30シーズン目を迎えました。節目のタイミングで、あらためて日本サッカーの進むべき道とその可能性について、ぜひみなさんも聞いて、一緒に考えていきましょう!
#4 Dialogue with 村井 満(元Jリーグチェアマン)
元Jリーグチェアマン・村井満さんの対談・前編。今年3月に退任されるまで、日本サッカーを強くするために数々のプロジェクトや改革を行なってきた。その改革の目的、退任後に挑戦することは? 村井さんが考えるJリーグが進むべき道とその課題など――。(以下は本編の一部)。
岡崎慎司(以下、岡崎) 僕なんかは、選手としてあんまり注目されてこなくて、先ほど村井(満)さんが言っていたように、(清水エスパルスに入団したときはFWの序列として)8番目(の評価)で、下から這い上がってくるタイプでした。
どちらかというと、チームの輪の中で勝手に育ったような人間だと思うんです。
チームの中でエリートみたいな選手は、そのまま伸びていく形が少ないのが原因なのかなって。
人間的な部分など、海外に挑んできた選手のキャラクターを見ながら、そういう「エリートみたいな選手をどう育てるか」というのも日本の課題なのかなと。
そのところも含めて考えると、その育成――子どもたちがどう育っていくかというテーマでいうと、Jリーグの育成を聞きたいです。
村井満(以下、村井) サッカー界ってさ、W杯が4年ごとに(あって)、いろんな見直しが行なわれている。
W杯というのはすごくポイントで、私の(Jリーグチェアマンとして)の 8 年間を振り返ると、2014 年にチェアマンになった直後に、(アルベルト・)ザッケローニ(監督)のときのブラジルW杯がありましたよね。
岡崎 はい。
村井 で、(グループリーグ初戦で)コートジボワールに1-0で本田圭佑の点でリードするんだけど、その後(ディディエ・)ドログバって怪しいのが(62分に)出てきて空気が変わっちゃって……。(64分と66分に失点して)やられて、ステージで敗退した。
あのとき、新米チェアマンとして(現地の)ブラジルに行っていて、日本が敗れてしまったことも残念だったんだけど。
やっぱり衝撃だったのは、開催国ブラジルにドイツが7 点ぶち込んだシーン。
王国ブラジルの開催地ですよ。「そのホームで7点ぶち込むって、ドイツはいったい何をしたんだろう」というところが発火点になった。
俺、ストーカーだからさ、徹底的に調べていくと、ベルギーという国のダブルパスというベンチャー会社に行きあたった。
クラブのアカデミー育成組織を第三者の外の人間が400項目5000点満点で採点する、このクラブは育成力が三つ星もしくはこのクラブは星なしみたいな。
ドイツ・ブンデスリーガの1部・2部の36クラブを全部格付けしてフィードバックしていたんだよね。
ドイツ協会は、そういう育成の力をベースに配分金なんかを渡していた。日本は優勝したらいくらあげるよ、と結果に対してインセンティブを出していたんだけど、ドイツはちゃんと人を育てれば将来的に強くなる先行指標――先に育成があるわけじゃないですか。
岡崎 はい。
村井 そこのところの育成を競い合っているということがあったんで、真っ先にダブルパス社にお願いして、Jリーグ全クラブを、同じ項目で採点してもらったら、ドイツ(ブンデスリーガ)が100 点だとすると、(Jリーグは)60点ぐらいだったんだよ。
そのとき、本当に喜んだのはただやっていないのが40パーセントもあったってことで(苦笑)。まだまだ伸び代があるってことだった。
最初の“ドイツの体験”がそうだったんですね。
で、そこから(開催国の)ロシア18年のW杯のとき。その前の年の2017年にU-17W杯とU-20W杯がその前年にあって、両方ともイングランドが優勝しているんだよ。
2017年FIFA U-20ワールドカップ(開催地:韓国):U-20イングランド代表は決勝でU-20ベネズエラ代表を1-0で下して優勝した
それで、(翌年の)ロシア大会も(A代表が)ベスト4にイングランドが入るんだけど、ガラリと人(メンバー)が変わっていた。
もう(ウエイン・)ルーニーとかの姿もなく、本当に若返ったイングランドがものすごく活躍していたんで。
「イングランドって何があったんだ」ということで、追っかけていたわけです(笑)。
岡崎 ハハハ(笑)。
村井 で、イングランドで出会ったのが、テリー(・ウェストリー)というイングランドのプレミアリーグの育成大改革をしたおっちゃんで。
EPPP(イートリプルピー)という「エリートプレーヤーパフォーマンスプラン」というボロボロのノートを見せてくれて。
これに基づいて、(イングランドの)育成改革をしたんだよって言われたのね。
(ロシア)W杯が終わった2018年の秋口だったと思うんですが、その頃かその後ぐらいに俺、岡(岡崎慎司)ちゃんところに行っているんだけど。
岡崎 そうですね。
村井 そのテリーさんに本当にお願いして、日本に来て、日本版EPPP(イートリプルピー)を作ってくれと。
向こうのやつをこっちにもらうだけじゃダメで。
日本にはやっぱり滝川二高みたいな高体連もあれば、高円宮杯、高校選手権もある。
いろんなものがあるから、「日本に行って日本の環境を見て日本でプロジェクトをやってほしい」と拝み倒して来てもらって始まったのが、あのProject DNAです。
イングランドで作ったものをほぼ日本版にアレンジし直して、育成力があるところに初めて星1つみたいな(Jリーグの)クラブ(※2022年3月31日、Jリーグはモンテディオ山形・AC長野パルセイロ・FC今治・FC琉球のアカデミーに1つ星を付与した)が現れたりして、育成力の競争が始まった。
で、たぶん10年後ぐらいには日本の育成力は相当変わると思うよ……続きはフルバージョンで✅
【動画内容】ヘッドライン
◇岡崎慎司との出会い、レスターでの会食
◇チェアマンの8年とJリーグへの恩返し
◇岡崎慎司がきっかけでチェアマン人生が始まった!
◇岡崎慎司はド三流選手「言ってもできない」
◇折れた心を立て直して前に向かう、逃げない、人のせいにしない
◇村井満の第二の人生は「人間力の言語化」
◇ドイツの衝撃から生まれた日本版「EPPP(イートリプルピー)」☜ピックアップ
◇拝み倒して始まったJリーグ育成改革「プロジェクトDNA」☜ピックアップ
◇10年後、日本の育成力は変わる☜ピックアップ
◇サッカーも人間力・人間性が大事
◇岡崎慎司が日本を代表する経営者になれる理由
◇活躍する選手に共通する能力は「傾聴力」と「主張力」
◇Jリーグが取り組むキャリア教育
◆時間:48分02秒
動画(後編)配信は7月6日(水)です!
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