分析ツールやGPSデータを用いたデータ活用がもはや日常的になった日本サッカー。だからこそ漠然とデータが有能であると思うのではなく、データ分析を適切に評価するリテラシーを身につけなければいけない。
そこで日本サッカー発展のヒントを岡崎慎司さんと探る動画コンテンツ「Dialogue w/」は、東大ア式蹴球部テクニカルユニットのアナリスト横田義典さんをお呼びし、データが出来ること・出来ないこと、秘めたる可能性、具体的な分析ツールの紹介と運用方法、費用等についてお話しいただき、まだまだ発展途上にある日本サッカーの「データ分析」の輪郭を掴んでいく。
(本記事は岡崎慎司「Dialogue w/」で配信中の『【サッカー×東大データ】リアルなデータを大公開「分析」でジャイアントキリングは可能なのか?』の一部を再編集した後編)
データ分析によるジャイアントキリングは可能なのか。
—— データ分析でジャイアントキリングを起こすことは可能ですか?
横田義典(以下、横田):ジャイアントキリングはなかなか難しいと思います。
というのも、マンチェスター・シティFCやリバプールのような十分な資金力があるクラブには、才能のある選手はもちろんのこと、コーチングスタッフをサポートするアナリスト人材も豊富です。
それが選手たちへの良いフィードバックや、質の高いデータ分析に基づいたスカウティングにつながっています。
また、チームを支えるアナリストだけでなく、コーチングスタッフたちもデータをうまく扱うことができるので、データ分析が確実にチームを強くしているのだと思います。
つまり資金力があるクラブがより質の高いデータ分析を行っているので、ジャイアントキリングは難しいということです。
—— 資金力がないチームでもデータ分析を使って成功している事例はあるんですか?
横田:資金力がないチームだと、正直、結果を出すのは難しいと思います。やはりサッカークラブとして、一番お金を使うべきは優れた選手と監督の獲得。
そのためビッグクラブでないかぎり、データアナリストにかけられるお金は限られてきます。
一方でグループの横の繋がりがあるクラブでは、アナリスト人材を活用の成功しているクラブもあります。
例えば昨シーズン結果を出したラ・リーガのジローナFCは、マンチェスター・シティFCが培ってきた知見を役立てたのだと思います。
優秀なデータ人材がサッカー界に来るには?
—— 資金がなかったとしても、データアナリストをこう使ってほしい、こういう協力が出来るみたいなヒントはあったりしますか?
横田:それは非常に難しい問題だと思います。というのもサッカーは好きだけど、将来的に指導側の立場に立ちたいという人はほとんどいないのが現状です。
サッカー以外の業界に就職をすれば、それなりに安定した生活が保障されているなかで、サッカー界を選ぶのはとても難しい選択だと思います。
まずそういった環境を整備していくことが優秀なデータ人材をサッカーに入れる第一歩になると考えています。
—— 岡崎さんは若者が参入しづらいサッカー界の現状をどう思いますか?
岡崎慎司(以下、岡崎):確かに、東大を卒業してからサッカー界に入るには、なかなか難しいところがあるのはわかります。
でも、2014年のFIFAワールドカップでドイツが優勝した時、全試合のデータを集計していたのは、ケルン大学の学生チームと聞いたことがあります。
そういった形で日本の学生がサッカー界に携わって、その中からひとりでも多くの若者たちが、サッカー界に入ってくれると嬉しいです。
もちろんサッカー界=お金がもらえないというイメージは、これからなくしていかないといけないと思いますが、一方で世界と繋がっている、世界に挑戦できるすごくグローバルな業界であることも知ってほしいなと思います。
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🔰シンクロナスの楽しみ方
日本サッカー、スポーツには世界に誇るべきポテンシャルがある。けれどそれはまだまだ世界に認められていない――岡崎慎司は欧州で13年目のプレーを迎え、その思いを強く持つ。胸を張って「日本サッカー」「日本のスポーツ」を誇るために必要なことは何か。岡崎は言う。
「新しいサッカーやスポーツの価値を探し、作っていくアクションが必要」。
「欧州にあって日本にないもの」「新しい価値を作るためのキーワード」をベースに、海外で活躍する日本人指導者や各界の第一人者たちと語り、学び、交流し、実行に移していく実験的場所!
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