
昨今Jリーグを目指して多くの地域クラブが日本国内に誕生し、様々な発信を通してそれらのクラブの魅力を目にする機会は多くなった。
ただ、夢が語られる一方で、サッカークラブを運営・発展させていくことがどれだけ難しく、過酷なことなのかという現実的な視点を忘れてはいけないのではないだろうか。
そんなサッカークラブ運営のリアルに迫るべく、日本代表のストライカーとして活躍した岡崎慎司が今季から監督を務める「FC BASARA MAINZ」を取材。日本ではなくドイツでクラブを発展させていくために具体的に何をしているのか、その実情とこれからの「FC BASARA MAINZ」の展望を「バサラマインツ奮闘記」と題して追っていく。
第1回のテーマはあまり語られることはないが経営において最も重要と言っても過言ではない「財務マネジメント」について(前後編の2回)、「FC BASARA MAINZ」のビジネスサイドの責任者である前川友穂さんに、ドイツ6部で戦うフットボールクラブの収支のリアルや、クラブを発展させていくために大事にしている視点を聞いた。
(語り手 「FC BASARA MAINZ」前川友穂)
(取材・文 中田徹)
ドイツ・日本人創設フットボールクラブの規模
――「FC BASARA MAINZ」の年間予算はどのくらいでしょうか?
支出は年間20万ユーロ(約3200万円)には届かない水準ではありますが、今季は黒字で着地する見通しとなります。
ただこの規模はドイツ6部リーグの中でもまだまだ低いほうだと思います。
現在、「FC BASARA MAINZ」は7位(取材当時)。昨季は3位でした。予算規模の割には健闘しているほうだと思いますが、これから5部、4部リーグに上がっていくためには、この規模感からよりスケールアップしていく必要があると感じています。
――フットボールクラブの支出の内訳を教えてください。
支出の半分以上が、選手・スタッフの人件費になります。あとはホームゲームやイベントなどの運営費、備品購入、ウエア代、サッカー協会への支払い、アウェーゲームの遠征費などです。
――次に売上の内訳を教えてください。
大部分がスポンサー収入となります。あとはチケット収入、飲食、マーチャンダイズなど、一般的なフットボールクラブと大差ない内容です。
企業経営の基本をフットボールクラブでも怠らない
――「FC BASARA MAINZ」を財務面から支えていく中で大事にしていることはなんですか?...