夫婦カウンセラーとしてこれまで2000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。
健全なコミュニケーションが成り立たない夫婦関係の辛さは、例えるなら「鈍い痛み」。少しずつ積み重なって日々の生活に重くのしかかってきます。
前回は、妻・あけみさん(仮名)との間に「溝」を感じている、たかよしさんのご相談についてお答えしました。後半となる今回は、夫婦関係の修復に向けたステップを探っていきます。
【前半記事】「家に帰るのが辛い」妻から無視され全くの他人状態。夫婦の溝の原因は?
見ているものの違いが夫婦の溝を作る
話しかけても返事がない、家族の大切な決め事を相談なく進められてしまう。自分を軽視するかのような妻の態度に悩んでいるという、たかよしさん。
うまくいかない夫婦関係は、心に身体に決して小さくはないダメージを残します。
そんな時にはどうしても「お前のせいだ」「あなたがおかしい」と、ひとこと言いたくもなるものです。けれど、夫婦の関係を修復したいと考えるなら、それが得策でないことは明らか。
こんな時には、視点を変えてみることが有効です。
私たちは誰でも自分の視点から世界を見ています。
同じ景色を見ているようで実はまったく違うものを見ていることもありますし、こちら側から見れば理不尽に感じるような事でも、相手の側から見ればそうならざるを得ない場合もあります。
だからこそ、「どうして自分ばかり」と思うような時ほど、相手の視点に立って問題を見つめてみることで、関係修復の鍵が見つかることがあります。
前回記事では、隣にいたはずのあけみさんがどんな思いで離れていったのか? どんな痛みを抱えていたのか? 彼女の視点に立って考えてみることをご提案しました。
実際にあけみさんが何を考え、何を思っていたのかはもちろん分かりませんが、相手の視点に立って理解を注いでみることで得られるものもあります。
人は「理解されていない」と感じると、「それなら私も理解しない」と反射的になりやすいものです。
先に私から理解をしよう、と考えることは稀で、「理解できないなら、理解させよう」「分からないなら、分からせよう」となるのが自然な思考の動きかもしれません。
ところが私たちは他者にコントロールされることが大嫌いで「それならあなたが先に理解して」と、一層頑なになってしまうことがほとんどです。
それではどちらにも「理解されること」は訪れません。
いっぽう、「あの時、君はどんな気持ちでいたのだろうか」と、理解されることを求めず、理解する側に回れば、少なくとも「理解されない」苦しみからは自由になることができます。
ここではまず「理解を注ぐ」ポジションに立つことが大切。それが関係修復の第一歩になります。
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