元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回は長州力との伝説の60分を徹底検証する。この試合を近くで見ていた名手たちの目には鶴田vs長州はどう映っていたのか。

Index
・60分時間切れでも鶴田圧勝のイメージを作った王道戦略
・レフェリーのタイガー服部、天龍は辛辣な鶴田評を

60分時間切れでも鶴田圧勝のイメージを作った王道戦略

 1985年8・5大阪城ホールで一騎打ちが決まっていながら、当日にジャンボ鶴田が右肘手術のために緊急入院したために流れてしまった鶴田vs長州力の全日本プロレスvsジャパン・プロレスの頂上決戦はジャパン自主シリーズ『ニューウェーブ・イン・ジャパン』第3戦の11月4日、大阪城ホールに延期された。

 ファンの間では「どうせ両者リングアウト引き分けがいいところ」などという冷めた声も出ていたが、それを払拭するために両者リングアウト引き分けを認めない完全決着ルールに決定。これが発表されるや前売りチケットが伸び、9500人のファンが詰めかけた。

 結果を先に書いてしまえば、60分フルタイム戦っての時間切れ引き分けで、結局は決着がつかなかったわけだが、この試合は「鶴田の底知れぬ強さが長州を呑み込んだ」として伝説になっている。その60分を徹底的に検証してみよう。

 85年11月4日は文化の日の振替休日ということで大会のスタートは午後3時。鶴田vs長州のゴングが鳴ったのは5時15分だ。鶴田が握手の手を差し出すと、それを長州が握り返してクリーンな形で試合はスタートした。...