元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回は鶴龍対決第1章の裏側。天龍源一郎が語った鶴龍対決第1章の勝因とは?

Index
・天龍革命以前の対決は2度の時間切れ引き分け
・33年後に天龍が語った鶴龍対決第1章の勝因

天龍革命以前の対決は2度の時間切れ引き分け

 天龍革命勃発以降、ファンの最大の関心事は「ジャンボ鶴田と天龍源一郎の鶴龍頂上決戦はいつ実現するか?」だった。タッグマッチによる抗争で気運を十分に盛り上げてからというのが従来の全日本の戦略だが、何と天龍&阿修羅・原の龍原砲の本格発進2シリーズ目の『サマー・アクション・シリーズ2』の天王山の8月31日、日本武道館で一騎打ち実現の運びになった。

 これは「ファンが見たいものを出し惜しみしない!」というジャイアント馬場の英断。天龍革命が長州力らのジャパン・プロレス勢大量離脱ショックを払拭したことで、馬場の意識も変わったのである。

「天龍は、ここ2~3年で出てきた選手。13年間、トップを張ってきた俺の気持ちはわからないよ。追う人間の方が楽とは言わないけど、こっちは常に最前線だからね。天龍に言いたいのは“インター王座に挑戦してこい!”と。UNとのダブル・タイトル戦という声もあるようだけど、UNはいらない。返上してインターを獲ったんだから。天龍は10年前の俺の道を歩いているということですよ」(鶴田)

「言われなくてもジャンボ相手にUNを賭ける気はないよ。ジャンボが返上して埋もれたUNチャンピオンをここまで持ってきた意地があるからね。13年間トップを張ってきた辛さ? 敢えて言わせてもらえば、長州がいた2年間と、俺と阿修羅がやった1シリーズと何試合かでその13年間が潰されたのが悔しくないの? 全日本の何割かをジャンボが背負っていた部分は確かにあるけど、あいつには自覚がないんだよ。今のジャンボには魅力がないから、8月31日に火をつけてやるよ」(天龍)

 こんな舌戦が繰り広げられたが、馬場が出した結論はノンタイトルマッチの60分1本勝負。これは「ベルトを意識して不透明な決着にならないように」という意味であった。...