元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

プロレスファンを熱狂させた鶴龍対決。戦いの中で天龍源一郎が引き出したジャンボ鶴田の人生観、渕正信が推測するジャンボ鶴田の鶴龍対決への本音とは?

プロレスの技量だけでなく人生観を賭けた鶴龍対決

 ジャンボ鶴田と天龍源一郎の鶴龍対決がプロレスファンの心を掴み、熱狂させたのは、プロレスラーとしての技量、主張をぶつけ合うだけでなく、生き方、価値観、人間性……それこそお互いの存在すべてをぶつけ合う戦いだったからだ。

「人生から価値観から、すべてが対極にいる人が反対側のコーナーにいたわけだから、これは面白かったよ。すべてが面白かったね。やってることすべてが……変な表現だけど、箸の上げ下げから気に食わないとか、やってることすべてがジャンボにつながるんだからさ。あの頃は毎日すべてがプロレスだったから。それはジャンボの言葉がどうであれ、ジャンボもそうだったと思うよ。余裕を持ちながらやっているっていうのが彼の美学だったからさ。あのジャンボが真っ向から来てくれたのは俺の財産。俺はジャンボが“天龍とやってもいいか”って立ち止まってくれたからこそ、その後の天龍源一郎があると思っているし、ジャンボが怪物だって言わしめたのは“俺が真っ向から行ったからだ!”っていう自負もあるよ」と、天龍は当時を振り返る。

 当時、鶴田は「天龍によって本気にさせられた」と言われると露骨に嫌な顔をした。...