元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回は「鶴龍対決」ベストバウトとの呼び声高い第5章。改めてジャンボ鶴田、天龍源一郎の凄さに迫る!

鶴田の攻めの凄さ、天龍の受けの凄さ!

鶴龍対決のベストバウトは89年6・5日本武道館の第5章

 ジャンボ鶴田がパワーボムで天龍源一郎を失神KOに追い込むという衝撃の1989年4・20大阪決戦からわずか46日……鶴龍対決第6章は鶴田の三冠ヘビー級王座2度目の防衛戦として組まれた。この日は天龍革命がスタートしてから2年と1日目。鶴龍対決は全日本の“至高の試合”としてファンに完全に定着し、同所新記録の超満員1万5200人の大観衆が詰めかけた。

 試合前、緊張していたのは首のダメージが心配される手負いの天龍ではなく、王者・鶴田の方だった。福沢朗アナウンサーの「いよいよですね」の呼び掛けに、しばし沈黙した後に「頑張ります」と一言だけで入場の花道へ。三冠王者になってからの鶴田には“全日本プロレスのエース”の重みが感じられるようになったのだ。

 試合は天龍が先に仕掛けた。鶴田のジャンピング・ニーをかわずと、バックに回っていきなりのジャーマン・スープレックス! これは「大阪の遺恨マッチにしたくないし、仕返ししようという気もさらさらない。俺の首は大丈夫だから、遠慮せずに攻めてこい!」という天龍のメッセージだった。

 ならばと鶴田はヘッドロックで天龍の首を捻り上げる。鶴田は鶴田で「手心を加えたら天龍に失礼。プロだったら相手の弱点を攻めるのは当然。そうしなければ次に自分に跳ね返ってくる」という気概を持っていた。...