元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。
本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。
【新版・永遠の最強王者 ジャンボ鶴田】第10章「鶴龍対決」の最後となる今回のテーマは「鶴龍対決の終焉」。プロレス界を盛り上げたライバル関係解消の裏側とは?
横浜決戦3日前、筆者だけが聞いていた天龍の覚悟
1990年に入ってからたびたびマスコミで取り沙汰されたのが天龍同盟の解散、あるいは再編成である。「全日本を活性化する」「ジャンボ鶴田を本気にさせる」という天龍革命当初の目標はすでに達成していたし、2年半が経過して天龍源一郎と川田利明&サムソン冬木の3人だけでは行き詰まり感は否めなかった。
天龍も「多分、冬木も川田も疲れたんだと思うよ。それに対して俺は“ありがとう”って気持ちだし、あいつらの体の痛みとか、いろんなことがわかっているから、正規軍に行って気持ちが新たに奮い起こせるなら、何ら俺に遠慮することはない。ただし俺とジャンボの戦いは、人生観もプロレス観も違うんだから、マンネリは絶対にないよ」と、鶴龍対決の継続を宣言しながらも川田と冬木が正規軍に戻ることは否定しなかった。
また、全日本内にも「もう天龍同盟は役目を終えたのではないか」というムードが漂っていたのも事実。1月シリーズから天龍同盟との戦いの矢面に立ったのがマイティ井上、ラッシャー木村、高木功といったメンバーだったことを考えても、正規軍と天龍同盟の抗争は難しい時期に入っていたと言わざるを得ない。
そしてひとつの事件が起こる。...