空前の筋トレブーム。
ジムに通う、宅トレなど人それぞれの手段で自分の身体を鍛えている人が増えている。そしてせっかく自分を追い込むトレーニングをするなら最も効果的な方法で成果を上げたいと思う人が多いはず。
「シンクロナス」のLIVE配信企画「シンクロライブ」にて、『ロジカル筋トレ』『ロジカルダイエット』(ともに幻冬舎新書)の著者で、大リーガー菊池雄星投手などアスリートのパーソナルトレーナーを務める清水忍さんにお話しいただいた「筋トレ」の誤解から、効果的なトレーニングを行うための準備について、紹介します。
「なぜその筋トレを行う必要があるのか」を考える
「なぜその部位を鍛えるのか」「なぜそのフォームで動作するのか」を論理的に考え、自分の目的に合ったフォームや回数でトレーニングを行えない人は少なくありません。ある程度のトレーニング歴があり、トレーニングを勉強しているのに出来ていない人がたくさんいます。
たとえば、バーベルスクワットというトレーニング種目があります。その名の通り、重りをつけたバーベルを担いで行うスクワットです。スクワットにはいろいろなやり方がありますが、一般的にバーベルスクワットは大腿四頭筋(太腿の前側の筋肉)や大殿筋(お尻の筋肉)を鍛える種目といわれています。
ところが、フィットネスジムでボディメイク系のトレーニングをしている人たちに「スクワットで大腿四頭筋や大殿筋を鍛えるとどうなるの?」と質問をすると、みなさん「足腰が強くなります」と言うんですね。
しかし、彼らの多くは大腿四頭筋を大きくして太い脚をつくることを目的としています。足腰を鍛えたいなら、必ずしもバーベルスクワットを行う必要はありません。ほかにも足腰を鍛えるのに適したトレーニング種目があります。
そこで、次に「なぜスクワットというトレーニング種目を行う必要があるんですか?」と彼らに質問してみると、「考えたことがなかった」というのです。「考えたことがなかった」というのは、言い換えるとトレーニングに対する考え方がわかっていなかったということです。
大腿四頭筋や大殿筋を鍛えると地面を踏み込む能力が強化されます。「バーベルスクワット=バーベルを持ち上げる」ではなく、バーベルの重さ+自分の体重という負荷がかかっている状態で「地面を強く踏み込んでいる」と考える。そうすれば、同じバーベルスクワットを行うにしてもフォームが変わってくるはずです。トレーニングへの意識も変化するでしょう。
このように「なぜそのトレーニング種目を行うのか」「なぜその部位を鍛えるのか」ということを論理的に考えられない人がたくさんいます。初心者だけでなく、ある程度のトレーニング知識がある人にも、こうした「トレーニングの誤解」がよく見られます。
多様な情報に触れることがロジカル筋トレの近道
とはいえ、トレーニングの意識を変化させるのは簡単なことではありません。一番いいのはしっかりした知識をもったトレーニングコーチに教わることですが、インターネットや本に書かれた情報を通じて勉強するのもひとつの方法です。正確な知識を身につけようと努力すれば、トレーニングの成果はもっと上がっていくことでしょう。
このとき大切なのは「どこから情報を得るか」ということです。たとえば、ボディメイクをしたい人は、一つひとつの筋肉を大きくして美しい体をつくることを目的としています。その場合は、一つひとつの筋肉を肥大化させることに特化したトレーニングを指導している人が発信する情報を受け取るべきです。
しかし、サッカー選手やバスケットボール選手などのアスリートがスポーツパフォーマンスを向上させたいという場合は、一つひとつの筋肉を大きくすることより、先ほどの「地面を強く踏み込むことのできる能力」のほうが重要になってきます。
そうであるなら、ボディメイク系のトレーナーよりも競技スポーツの指導歴が長い人が発信する情報を受け取るほうが、その人にとって腑に落ちる指導になる可能性があるでしょう。
情報というのは「誰が発信した情報か」によって質が変わってきます。一番大切なのはいろいろな人の話を聞くことです。これは自分がほしい情報ではないかもしれないと思ったとしても、話を聞いてみることで情報を比較することができます。そうすると「自分にとって必要な情報は何か」が理解しやすくなり、一番必要とする情報にたどり着く可能性が高くなります。
多様な情報を受け取るために日々努力を続ければ、やがてトレーニングをロジカルに考えることができるようになり、パフォーマンスも向上していくと思います。