元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

「名勝負製造機」と称されたプロレスラー川田利明と、ジャンボ鶴田の出会いから初一騎打ちとなった『チャンピオン・カーニバル』公式戦までの壮絶な物語をお届けする。

鶴田の華やかなプロレスに惹かれた川田

 1991年春、9年ぶりにリーグ戦が復活した『チャンピオン・カーニバル』でBブロックにエントリーされたジャンボ鶴田はカクタス・ジャック、田上明、ダニー・クロファット相手に3連勝した後、4月6日の大阪府立体育館で川田利明との初一騎打ちを迎えた。

 川田にとって鶴田はプロレスのイメージを変えてくれたプロレスラーだった。

 小学生の頃、父方の祖父母の家に家族で同居していた川田はプロレスが嫌いだったという。プロレス好きの祖父は土曜の夜には全日本プロレス中継を観ていたが、川田は裏番組の『8時だョ!全員集合』を観たかったからだ。

 その後、父が亡くなり、祖父母の家を出て、母と妹との3人暮らしになった川田は中学2年生の時、それまで嫌いだったプロレスを何気なしに観た。それは77年8月25日に田園コロシアムで行われた鶴田vsミル・マスカラスだった。...