元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回はプロレスファンを沸かせた鶴田軍vs超世代軍について。ジャンボ鶴田をはじめ当事者たちはどう思っていたのか?そして間近で鶴田を見ていたパートナー田上明が語る鶴田への感謝、小橋建太が見た鶴田の無尽蔵のスタミナの秘密とは?

田上も覚醒!鶴田軍vs超世代軍の熱闘

鶴田軍として急成長した田上

 4月16日、愛知県体育館における優勝決定戦でスタン・ハンセンを撃破して全勝優勝、4月18日には日本武道館で三沢光晴をバックドロップ3連発で完膚なきまでに叩き潰して三冠ヘビー級初防衛を果たし、怪物的な強さで最強を証明したジャンボ鶴田。

 この日本武道館はシリーズ開幕前にチケットが完売になり「当日券なし」という事態に。89年1月2日の後楽園ホールから始まった後楽園ホール、日本武道館、横浜文化体育館の連続超満員記録は、この4・18日本武道館で60回となった。

 前年90年4月からの天龍源一郎を始めとするSWSへの選手大量移籍騒動で一時は存亡の危機に立たされた全日本プロレスだが、鶴田という強大な壁に三沢光晴、川田利明、小橋健太(現・建太)の超世代軍が挑むという図式が若いファンの支持を得て、結果的にファン層が拡大されたのである。

 鶴田vs三沢の三冠戦2日後の4月20日、後楽園ホールにおける『ファン感謝デー』も2100人(主催者発表)のファンが詰めかけて連続超満員記録を61回に更新。この日のメインイベントは鶴田&田上明&渕正信vs三沢&川田&小橋の鶴田軍vs超世代軍の鉄板の6人タッグマッチで、実に51分32秒の大熱闘になった。

 三沢がタイガー・スープレックスで田上をフォールした瞬間、三沢コールが起こり、それは超世代軍が花道のカーテン奥に消えるまで続いた。超世代軍が見えなくなると今度はゼンニッポン・コール。鶴田と渕が田上を抱え起こして3人で歓声に応えるとオー・コール、フッチ・コールが起こり、最後は引き揚げる鶴田軍に再びゼンニッポン・コールだ。

 この日は前年11月30日に帯広市総合体育館で左大腿骨亀裂骨折の大怪我を負ったジャイアント馬場がテレビ解説席に座ったが、選手たちが全員引き揚げて、馬場が席を立とうとすると、馬場コールが爆発。ファン感謝デーは、全日本の選手がファンに感謝するというよりも、全日本の選手がファンに感謝される大会になったのだ。

「若手からベテランまで全員が頑張っている。それに対してファンが熱い声援を送ってくれる。これが全日本プロレスですよ!」と、鶴田は熱く語っていた。...