愛し合い、生涯を共にするパートナーとして誓い合いスタートした結婚生活。しかし仕事や家事、育児に追われる中、気がつけば壁があると感じたことはないだろうか。そんな夫婦の危機をどうすれば乗り越えられるのか、“リカバリー力”に焦点を当てた本連載。

 夫婦カウンセリングルポの前半では、Life Design Labo安東秀海さんのカウンセリングによって①修復改善と②現状維持の間を選んだ北川さん。心に大きな『わだかまり』を抱えた北川さんは、どう夫婦として歩みを進めていけばいいのでしょうか。

取材・文=吉田彰子

安東秀海さん

心理カウンセラー

夫婦関係を専門とするカウンセリングオフィス『Life Design Labo』を開設。機能不全に陥った夫婦の関係性を読み解き、健全なパートナーシップ構築へと導くことを得意とする。著書に『夫は、妻は、わかってない。』
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相談する人:北川恵美子さん。交際期間1年を経て、マスコミ関係の夫と結婚。現在結婚14年目。小4と年長の娘二人を持つ専業主婦。ご夫婦とも関西出身・在住。

前編はこちら【「夫に早くあの世にいってほしい」妻が夫婦カウンセリングを受けてみた】

夫も親も友達もいない、壮絶なワンオペ育児

※写真はイメージです Tharakorn / iStock / Getty Images Plus

安東:では、後半を進めて行きたいと思います。

北川:よろしくお願いします!

安東:うまくいかない時って話し合いをしたりすると思うんですけど、恵美子さんの場合は彼があんまり話し合いにのらないんですよね?

北川:全然のらないです!

安東:話し合いができない=コミュニケーションがとれてない。また、それによって考え方や価値観のズレに違和感を感じていることが是正できていない。話し合いに参加してくれないことでわだかまっている、という3つあると思います。では、彼が「わかった、じゃあ話し合いをしよう」と言ってきたら——。

北川:「おお!」と思いますね!

安東:(笑)。実際に話し合いが始まっていくと、今まで話せていない分、考え方の違いが出てくるし、傷ついた人同士が話し合いを始めると、防衛し合って埒があかないとか、防衛的反応で相手を攻撃するといった可能性があります。

 なので、先に気持ちのわだかまりを解きましょう。今日は彼がいないので、わだかまりを解くアプローチは恵美子さんでいきたいと思います。
 いくつかあると思うのですが、ひとつは産前・産後。どちらがキツかったですか?

北川:産後ですね。夫の仕事が忙しいのは重々承知やったんですが、土日もいない、いつもいない。長女は背中スイッチが激しくて置いたら泣くが続き、私は腰痛と頭痛と腱鞘炎と不眠のスパイラル。出産後、ずっと楽しみにしていた年末の帰省も、夫の仕事が落ち着くのを待っていたら元旦になっていました。そうと知っていたら、さっさと先に一人で新幹線乗って帰ったのに。

※写真はイメージです Guido Mieth / DigitalVision / GettyImages

 またある時、日曜は大学時代の友達の結婚式に行くからって言われたんです。「私ずっと辛いのによくその予定空けれたね? もうちょっと申し訳なさそうに言えへんの?」と言うと、「早くご祝儀書いてよ」って言われたんです。たまの休みに関西の友達と会いたいのも分かるんですけどね。たいして仲良くない友達やったし、持って帰ってきた引き出物もしょうもなくって、もう余計に腹立ちました(笑)。

 私がその後、育児ノイローゼのようになったので、部署を変わってもらったんです。土日休みになったのも束の間、次女を産んだすぐ後に、のうのうと社員旅行へ行きました。まだ手のかかる長女と、生まれたばかりの次女、風邪を引いている私を残して。まあ、百歩譲って行くのはいい。でも「ほんまごめんな、俺やめとこか?」って嘘でも言えへんかなと。

安東:10年前くらいは「産後クライシス」という言葉もまだ浸透していなかった頃ですもんね。

北川:子どもたちのことはものすごく愛していて、私より母性ある父親だと思うんですけどね。

心に抱えた大きな『わだかまり』を解き放つ

安東:少しずつ...