中世ヨーロッパ風の架空世界の経済活動に光を当て、狼の化身ホロと青年行商人ロレンスの旅を描いたライトノベル作品『狼と香辛料』シリーズ(著:支倉凍砂)。その奥深い世界観を、西洋史を専門とする研究者が読み解く!

仲田公輔
岡山大学 文学部/大学院社会文化科学学域 准教授。セント・アンドルーズ大学 歴史学部博士課程修了。PhD (History). 専門は、ビザンツ帝国史、とくにビザンツ帝国とコーカサスの関係史。1987年、静岡県川根町(現島田市)生まれ。

2005年に電撃小説大賞銀賞を受賞した支倉凍砂『狼と香辛料』が今年2024年、再びアニメ化されて話題を呼んでいる。 私はこの作品に...続きを読む

街の建造物

 都市に立ち並ぶ建造物はどうだろうか。

 アニメや設定資料集を見た方であれば、『狼と香辛料』の世界の建造物が意外と高層だと感じたのではないだろうか。ホロとロレンスが宿屋の窓から街を見下ろすシーンも多い。作中でも、例えばリュビンハイゲンについては、囲壁に囲まれてスペースが限られた都市の建造物は高層化しがちであることが述べられている(II巻p. 142)

 実際の中世都市においても、...