毎月行っている「データの裏側編集部会議」。どんなデータを検証するのか、何を聞くのか? メディアや政府、調査会社などで発表されるデータをちょっと違った角度から見てみると、たくさんの疑問が浮かんできます。
【議事録】
・・ピックアップしたデータ・・
・刑法犯の認知件数
※対象年齢は適切?
・下宿生の仕送り額
※実際の調査とメディアで取り上げるられる数字の印象「差」
・出生数の推移
※80万人割れは衝撃だけど……
・子どもの貧困
※ヤングケアラーの実態を表すデータ?
【編集会議のキーワード解説】
速報値、暫定値、確報値……ってなんだ?
統計調査の結果の多くは複数回発表されることがあります。これは集計のタイミングによる違いで、「速報値」「暫定値」「推計値」「確報値」など区別されています。
例えば、厚生労働省の調査で、ニュースなどでもよく取り上げられる「名目賃金」(現金給与総額)などが発表される「毎月勤労統計調査」は、必ず「速報値」と「確報値」を発表します(以下、写真参照)。
【※毎月勤労統計調査による発表データの裏側は→「給料が上がっていないのに、“賃金は上がってる”論」の怪を解く。」】
速報と確報の違いについて、厚生労働省は「調査票締切日に先だち、ある時点でそのときまでに提出された調査票で集計した値を速報値として公表している。その後、追加された調査票を加えて集計した値を確報値として公表している」としています。
同じく厚生労働省が調査し、昨今話題の「出生数」などが示される「人口動態調査」について、令和2年まで出していた「推計値」(国勢調査が行われない年の推計)の発表を以下の理由からやめています。
「社会の状況が変わっていく中で、令和2年及び3年の数値に大きく増減があり、これまで用いてきた機械的な算出方法により算出した推計値は、実態と乖離する恐れがあることから、令和元年を最後に推計しないこととしました」(人口動態調査HPより)
速報値は例えばGDPなどの短期的な経営判断の材料とされる指標として重要視されますが、一方で精度が上がる「確報値」とは大きく乖離するという課題もあります。
こうした例からもわかるとおり、データを見るときにはどの段階の発表であるかを確認することが正確な分析には欠かせません。特に、多くのメディアは「速報値」を大々的に報じる傾向があります。
その数字だけを鵜呑みにすると実態とかけ離れたものを「エビデンス」「ファクト」とみてしまう可能性があるわけです。
番組紹介
ジャーナリストの長野智子さんを編集長に、重要なニュースやテーマにまつわる「データ」をピックアップ(編集会議)。その数字が示していることについて会議・取材し、まとめてていきます。「データ」の背景を紐解きながら、取材過程を【音声・動画・記事】で配信。その読み方を楽しく、わかりやすく学んでいくコンテンツです。
前回の【データの裏側】は「消費者物価指数」と「賃金データ」
→https://www.synchronous.jp/articles/-/820
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