中世ヨーロッパ風の剣と魔法のRPG世界を舞台に、魔王討伐の旅のあとを描いた人気漫画作品『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)。その豊かな世界観を、西洋史を専門とする研究者が歴史の視点でひも解く!

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仲田 公輔
岡山大学 文学部/大学院社会文化科学学域 准教授。セント・アンドルーズ大学 歴史学部博士課程修了。PhD (History). 専門は、ビザンツ帝国史、とくにビザンツ帝国とコーカサスの関係史。1987年、静岡県川根町(現島田市)生まれ。
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様々な「西洋中世」イメージを取り込んで広がった、
剣と魔法のファンタジー世界

 中世ヨーロッパ風、あるいは「昔のヨーロッパ風」世界観を下地にした『葬送のフリーレン』から、王侯貴族と教会という、ある意味で最も「昔のヨーロッパ」らしい要素を抜き出し、実際の西洋中世と比べてみた。

 冒頭でも述べた通り、『フリーレン』は西洋中世風の世界観を間接的に受容してきた本邦におけるRPG風世界観の延長線上に位置づけられ、そもそも正確に西洋中世を描こうという作品ではない。それが様々な設定を取り込み、作劇に広がりを持たせることを可能にしている側面もある。他方で、中世風の建造物が登場するなど、やはりどこかで「中世」という言葉が意識されているような節はある。

 『フリーレン』に限らず、中世風ファンタジーで抱いたイメージをもとに、実際の中世ではどうだったのだろうかと概説書・入門書などを手に取ってみて、イメージと実態の乖離に驚いたり、意外な共通点を見つけたりするのも、また楽しみの一つになるのではないだろうか。

新シリーズ 『狼と香辛料』編【2024年8月下旬開始予定】

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