中世ペルシア風の異世界を舞台に、王太子アルスラーンと仲間たちの活躍と成長を描いたファンタジー小説『アルスラーン戦記』(著:田中芳樹)。その壮大な世界観を、西洋史を専門とする研究者が読み解く!(第7回/全7回)

仲田公輔
岡山大学 文学部/大学院社会文化科学学域 准教授。セント・アンドルーズ大学 歴史学部博士課程修了。PhD (History). 専門は、ビザンツ帝国史、とくにビザンツ帝国とコーカサスの関係史。1987年、静岡県川根町(現島田市)生まれ。

作中に見る第4回十字軍の要素 十字軍の中でも『アルスラーン戦記』との関係で特に注目に値するのが第4回十字軍である。第4回十字軍といえば、12...続きを読む
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様々な歴史要素が織り交ぜられた圧倒的世界観

 以上、『アルスラーン戦記』を読みながら、固有名詞や話の筋書きから想起された歴史要素について考えを巡らせてみた。中世ペルシアが舞台という触れ込みの作品だったが、思った以上に様々な歴史要素が散りばめられていることがわかった。なるほどそこを組み合わせるのかと、作者の創造性に驚かされる箇所が幾多もあった。

 自在に古今東西の様々な要素をオリジナリティたっぷりに交えながら展開するからこそ、異国情緒にあふれる架空の世界を舞台にしつつも、どこか今・現代の私達とつながりや親しみを感じさせ、入り込んでいける物語が成立しているのだろうと思われた。私もその圧倒的な世界観に引き込まれた一人である。

 もしこの連載を機会に、作品についても歴史についても、読者がより楽しむきっかけとなってくれれば、筆者としてはこれ以上の喜びはない。

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