遠藤航の強さを支える「股関節」のトレーニング

 

自身もボブスレーで五輪に出場した経験を持ち、現在ではサッカー日本代表主将・遠藤航選手のパーソナルトレーナーを務める小林竜一氏。

7月31日に行われた小林さんのLIVE配信では、遠藤航選手へ提供しているトレーニング方法ともに、小林さんがボブスレーから着想を得たメソッドを伺った。今回はその中から実は人の体において重要な役割をに担う「股関節」の働きと遠藤航選手が取り組んだ「股関節」をターゲットにしたトレーニングについて紹介する。

フィジカル改善メソッド「ボブトレ」動画解説はこちら
 

プロのサッカー選手でも股関節を十分に使えていない?

 僕が、初めて遠藤選手のプレイを見たのは、まだ海外に移籍する前の浦和レッズ時代でした。国内リーグの最終戦に出場されている姿を見た時、すごい躍動感がある選手だなという印象を持ったのを覚えています。でも、試合後にホテルで身体を見させてもらった時、股関節などの関節の可動域が少し狭いな、動きに硬さがあるなと感じたんです。

 あれだけ足を使うスポーツをしているのだから、股関節の可動域を獲得して身体を巧みに動かせれば、もっとパフォーマンスが向上するはずだ。そんな想いから、遠藤選手に股関節をターゲットとした動きのトレーニングを提案するようになりました。

 僕自身、かつてボブスレーの日本代表として活動していて、その経験から今の股関節をターゲットとしたトレーニングにたどり着きました。しかし、これはスポーツ選手に限った話ではありません。一般の人でも股関節の巧みな動きを獲得することで、多くのメリットを享受することができます。

 よく「高齢になると筋肉量が落ちたり、適度な運動をしないと歩けなくなったりする」と言いますが、実際に人間の身体の機能は使わないと退化していく性質を持っています。なので、痛いからや辛いからといって動かさないと、その部位や関節はどんどん使えなくなってしまう。

 もちろん股関節だけでなく、すべての関節の動きが重要なのですが、歩くや立ち上がるなどの基本的な動作には、柔軟な股関節の動きが欠かせません。股関節はその構造から自由度が非常に高く、いろんな方向に動かすことができる一方、可動域をできるだけ広く使っておかないと、動きは制限されどんどん退化して歩けなくなってしまいます。

 ほかにも、立ち上がる時に身体を支えられなくなるなど、さまざまな身体の不調の原因になりかねません。だからこそ、股関節の機能を意識して鍛えることで、いつまでも思い通りに動ける身体を維持していく必要があるんです。

遠藤航選手も実践している股関節のトレーニング法

7月31日に行われたLIVE配信では動画や画像を用いてより分かりやすく遠藤航選手が取り組んだ「股関節」のトレーニングについて、わかりやすく解説してもらった。

 本格的にトレーニングを始めたのは、遠藤選手がドイツのブンデスリーガに移籍した時期です。その頃は、コロナ禍ということもあり、初めてリモートで指導することになって、週に1〜2回くらい画面越しでトレーニング指導をしていました。

 最初は、リモートでどの程度できるか不安がありました。想定していた状態よりはスムーズにできたのですが、こちらの想像力だけでは補えない部分が多くあると実感しました。

 たとえば、僕がトレーニングの動きを見せても、ディテールを伝えることができない。いくつかの角度で撮影をしないと動きを理解してもらえず、対面での指導に比べてスムーズにいかないことばかりで。そういう時は、正面、横側、後方の3つの方向から撮影するなど、さまざまな試行錯誤を繰り返しました。

 ほかにも、僕にはわかる言葉であっても、遠藤選手にはわからない表現などがあって、その都度、言葉を選びながらコミュニケーションを取っていました。なので、通常の対面でやるトレーニングよりも、多くの時間と労力を要しましたね。

 また、遠藤選手がドイツにいた時期は、僕の活動拠点は日本の鳥取県鳥取市でした。8時間ぐらいの時差があるので、トレーニングの日時を決めるのも大変でした。遠藤選手がチームの練習を終えて、あちらの昼3時くらいにトレーニングをしたいとなると、日本はだいたい23時くらいです。

 試合の日程に合わせて、数日前からトレーニングの依頼を受けるので、お互いにスケジュールの調整をしながら日時を決めて。僕はいつも日本時間の23時から深夜2時くらいまで、リモートで遠藤選手のトレーニング指導をしていました。

小林竜一さんの“誰もが挑戦できる”フィジカル改善メソッド『ボブトレ』はこちら。