渡部陽一「1000枚の戦場」67~70/1000
戦争はなぜ起こり、どうやって終わっていくのか? そして、人々はどのような暮らしをしているのか。
約130の国と地域を取材し、様々な紛争地のリアルを撮影し続けている渡部陽一氏が世界で今、起きている戦争について解説します。
今回は2月6日に発生したトルコ・シリア大地震で再びクローズアップされたシリア内戦です。
「1000枚の戦場」
渡部陽一が解説する「戦場」の日常。近いようで遠い世界の本当の姿を1000枚の写真が映し出す。隔週土曜日に最新回配信。
こんにちは。戦場カメラマンの渡部陽一です。
今年(2023年)2月6日にトルコ南部大きな地震が発生し、トルコとシリア両国には多くの犠牲者が出ています。
今、ウクライナ戦争に全ての情報がフォーカスされていますが、実は今も世界中で、たくさんの戦争が続いているんです。
特に中東のシリアでは2011年3月に中東の民主化運動「アラブの春」の影響を受けました。
シリアの強権体制アサド大統領に対してシリア国民の方々が独裁政権を排除して、自由な暮らし、教育、仕事、生活、自由を求めた民主活動のうねりが広がったんです。
この2011年から約12年という歳月が過ぎ去りました。
今でも戦闘は続いています。
大地震が発生したトルコ南部とシリア国境地域はどんなエリアなのか?
シリア内戦は、三国志ではないですが、トルコ南部からシリアにかけて、非常に絡み合った構造になっているんです。
まず、シリアの強権体制のアサド大統領。
それに対して反体制派・反アサドを掲げる反体制派組織。
この反体制派組織はシリアの北西部、イドリブ県アレッポという大きな街の
周辺地域を拠点にして、今でも激しい戦闘圧力をアサド政権から受けています。
この北西部イドリブ県は隣がもうトルコと国境を面している地域です。
さらに、そのシリアの北部一帯にはトルコやイラクやイラン、そしてシリア一帯に広く暮らしているクルド人の方々。
こうした複雑な対立状況が背景にあった為、トルコ・シリア大地震では
世界中の支援というものが届きにくいというケースが見受けられました。
大地震後、孤立するシリア・アサド政権反体制派
戦争は自分たちに優位な環境をつくるということが基本にあります。
今回の地震、シリアで最も被害の大きい地域の1つが反体制派の拠点、北西部の国境地域。しかし、世界から集まっているはずの支援物資が届いていない。
なぜか?それはシリアのアサド大統領が止めている可能性も考えられます。
「支援」という大義を使って反体制派の地域に政府が揺さぶりをかけてくる。
これも現実としてあります。
本動画のPOINT
シリア内戦の絡みあった構造(トルコ南部、シリア北部の対立する勢力)
① 「シリアの強権体制・アサド大統領」
② 「反アサドを掲げる反体制派組織」
③ 「シリアの北部一帯のトルコやイラクやイラン」
④ 「国土を持たないクルド人」
【その他の写真】
・写真8/1000:人道回廊で蜂の巣にされた車
・写真12/1000:並ぶ戦車(ウクライナ)
・写真17/1000:溶けたロシア軍戦車
・写真19/1000:広大なひまわり畑
・写真23/1000:忘れられた孤島「スーダン」
・写真27/1000:タリバーンが力を再興させた「アフガニスタン」の今
・写真31/1000:新疆ウイグル自治区で暮らす人々
・写真35/1000:「トランプ・共和党」熱狂の背景を映した1枚
・写真39/1000:金日成・正日が示す威光
・写真46/1000:ウクライナの悲しみを表した赤と黒の旗を羽織る少年
・写真51/1000:頭にボールを乗せるイラクの少年
・写真55/1000:イラクの群衆
・写真61/1000:街中を監視するアフガニスタンの男性セキュリティ
・写真64/1000:燃やされたウクライナ北西部のアパート
👇毎配信をまとめて視聴は以下より👇 (今回の動画は2023年2月に撮影しました)
「戦場」の真実をどのくらいの人が理解しているか。戦場にある悲惨な現実。犠牲になるのは子どもたち。一方で、戦場にいる人々は「私たちと同じ」日常を持っている。これも「戦場の本当の姿」――。戦場カメラマン渡部陽一が撮ってきた写真の中から、1000枚をピックアップ。写真とともにその背景を知る。「戦場の真実」と「世界の本当」を学ぶ。
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