渡部陽一「1000枚の戦場」119~122/1000
第30回のテーマは「イスラエルとパレスチナの衝突の歴史」について。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを拠点とする「ハマス」の軍事衝突。
このパレスチナ問題は、中東問題の核であり、世界情勢の様々な衝突に関わっている、まさに「世界情勢の問題の核」。
情勢を紐解いていくと、現代から旧約聖書、古代エジプトの時代まで繋がっていきます。
そのなかでもイスラエルとガザの衝突の中で歴史を大昔まで遡ると、混乱が生じてしまうことも多いんです。
今回はパレスチナ情勢、特にイスラエルが建国された時点から、ガザとイスラエルの衝突を見ていきたいと思います。
渡部陽一氏が過去に撮影したイスラエル軍兵士たち、ヨルダン川西岸の写真とともに解説します。
ユダヤ人の迫害の歴史が生んだ問題とは
こんにちは。戦場カメラマンの渡部陽一です。
中東パレスチナ情勢。
イスラエルが建国されたのは1948年5月14日、パレスチナ。
この土地にイスラエルが建国されたんです。
どうしてこのアラブの土地であったパレスチナに、イスラエルという国が突然建国されたのか。
それは、「ユダヤ人の悲しみの迫害の歴史」が関わっているんです。
ユダヤの王国が元々あった、このパレスチナ土地。
でも、そのユダヤの王国があった場所。
ローマ帝国に破壊されてしまい、ユダヤ人が離散したことで「ディアスポラ」(離散ユダヤ人)と呼ばれています。
世界中にユダヤ教徒の方々が避難する状況が繋がっていったんです。
そこから特にヨーロッパ方面では異教徒としてユダヤの方々が大きく排除されてきました。
さらに、イエス・キリストを殺害したのがユダヤ教徒であるということが、新約聖書の「マタイの福音書」に描かれてるんですね。
そういった歴史の流れによって、ユダヤの方々の迫害がずっと続いてきたんですけど、やはり大きかったのは、あのナチス・ドイツ時代の「アウシュビッツ」。
ユダヤの大量虐殺が起こったことによって、世界大戦を通して、国連だけでなく、世界中の国々の中で、「これ以上ユダヤ人に対する残虐な迫害は、もうあってはいけない」ということで、「だったら、ユダヤ人の国をもう一度、一つの場所に作ることにして、こうした迫害がもうなくなるようにしよう」という流れができました。
それがユダヤの国があったパレスチナの土地なんです。
1948年の5月14日に建国されたことによって、その土地で暮らしていたパレスチナ、アラブの方々が追い出され、難民になってしまったんですね。
事実上、土地を奪われてしまった。
これによってアラブの国々が激怒して、イスラエルに対して戦争を起こしたのが中東戦争なんです。
3つの宗教の聖地が重なりあうエルサレム旧市街
そうした中東戦争が続き、イスラエルの土地、アラブの土地、さらには冒頭の写真のように、本来は国際管理下に置かれている東エルサレム、旧市街。
この地域には、黄金のモスクが見えています、これはイスラム教徒の聖地
「岩のドーム」。
そして手前に見える壁は、「嘆きの壁」と呼ばれているユダヤ教の聖地です。
ここには元々のユダヤの神殿があって、唯一残っているユダヤ教の神殿の跡地なんですね。
さらに、そのすぐ近くには、イエス・キリストの墓である「聖墳墓教会」があります。
約1キロ四方のこの旧市街の中で、3つの宗教の聖地が集まっている状況なんです・・・〈続きは動画で✅〉
《今回のポイント》
① 1948年5月14日にイスラエルが建国されたことからパレスチナ問題が火を噴いて、未だに戦争状態が続いている。
② エルサレム旧市街では、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。3つの宗教の聖地が重なり合っている。
③ イスラエルがイスラム教の盟主「サウジアラビア」に接近したことが、今回のハマスとの戦闘の引き金となった。
・写真8/1000:人道回廊で蜂の巣にされた車
・写真12/1000:並ぶ戦車(ウクライナ)
・写真17/1000:溶けたロシア軍戦車
・写真19/1000:広大なひまわり畑
・写真23/1000:忘れられた孤島「スーダン」
・写真27/1000:タリバーンが力を再興させた「アフガニスタン」の今
・写真31/1000:新疆ウイグル自治区で暮らす人々
・写真35/1000:「トランプ・共和党」熱狂の背景を映した1枚
・写真39/1000:金日成・正日が示す威光
・写真46/1000:ウクライナの悲しみを表した赤と黒の旗を羽織る少年
・写真51/1000:頭にボールを乗せるイラクの少年
・写真55/1000:イラクの群衆
・写真61/1000:街中を監視するアフガニスタンの男性セキュリティ
・写真64/1000:燃やされたウクライナ北西部のアパート
・写真70/1000:シリア国旗のミサンガをつけた避難民
・写真74/1000:ポーランドとウクライナ・キーウを繋ぐ国際列車
・写真78/1000:首都キーウ中央駅のプラットホームで再会する家族
・写真80/1000:ダルフール地方ニャラに設置された難民キャンプ
・写真86/1000:キーウの街中で目にしたアーティストの壁画
・写真87/1000:泥水に覆われた道をトラックで数か月かけて走破したジャングル
・写真91/1000:日本人襲撃テロ事件の現場となったダッカのレストラン、ホーリー・アルチザン・ベーカリー
・写真96/1000:世界遺産ハバナ旧市街の街並み
・写真101/1000:ロシア軍による軍事占拠を意味するVのマークが記された乗用車
・写真107/1000「ワールドトレードセンター爆破事件跡地に建てられたワンワールドトレードセンタービル
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