渡部陽一氏が撮ってきた膨大な写真の中から1000枚をピックアップし、「戦場のホント」を動画とテキストで解説する「1000枚の戦場」。今回は特別編として戦場カメラマンの仕事に焦点を当てる。
カメラの進化についていけるかというのは世界中のカメラマンのステージではすごく勉強になり、苦しみ、喜びです。今でも闘っています。
僕にとってカメラとは、いかにタフでありスピーディーか。カメラを構えバッと撮る。そのスピードについていけるカメラを愛用してきています。
これが各メーカーの最新鋭はハイスピードの飽和状態まできているので、一般仕様でもプロ仕様でもさすがだなという思いですね。
今まで約130か国を回りました。目標は200か国すべて回ること。
カメラマンとして、そこに最新鋭のカメラで行く。これは僕にとって難しさ、大変さでもあり、喜びなんですね。
紛争地から写真を届ける方法
そもそも戦場カメラマンが紛争地の前線、「ハムシーン」と呼ばれる砂塵が舞う視界が遮られた砂漠の中でどうやって写真を送っているのか。
前線にはカメラだけではなく必ずパソコン、インマルサットと呼ばれる国際衛星電話、データ通信や写真を送る通信衛星専門のBGAN(ビーギャン)を持っていきます。
撮影をしたらこの3つをすぐに移動している車の中で出す。砂漠の風が少しでも収まれば車の天井に置いてアンテナを立てる。宇宙衛星のアンテナのシグナルを捉えて、インマルサットを繋げてすぐにできる限り耐える画素数に整えて、それを一気に20枚30枚を契約している通信社編集部にドバっと送るんです。
そこに各1枚1枚の写真にはデータ、撮影場所、時間、そしてキャプションと呼ばれる文章、写真の背景。それらを全て瞬時にいかに早く打ち込むか。天候と衛星のアンテナが不安定なので、いかに早く撮るかだけでなくデータ処理してすぐに出せるか、このスピード感を戦場で世界中のカメラマンから教わったんです。
あとは撮る技術、全体の構成の構図。例えば30枚送るときにヨーロッパ方面のメディアがどんなストーリーを求めているのか、アジアのメディアがどんなストーリーの写真を求めているのか、中東方面であればどんな写真の作り方が組み写真としていいのか。
そういったそれぞれの地域が好む撮り方、組み立て方をたくさんのカメラマンから教わりました。
そのような技をもって組み立てていくと、撮った写真がすぐに朝刊に載ったり、世界中の英字新聞の一面を捉えたりします。...