吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第16回は岡山学芸館高等学校(岡山県)#3

奈良の天真爛漫トランペッター

 今年、高1で岡山学芸館高校吹奏楽部の55人の百合メンバーに抜擢されたのがトランペット担当の大東こころ(ココロ)だ。

 ココロは奈良県の生駒市立生駒中学校吹奏楽部の出身で、近畿大学附属高校吹奏楽部の主将・ケイの後輩にあたる。

 当時キャプテンだったケイを「神」と崇拝し、憧れを抱いていたココロは、自身が中3になるとキャプテンを継いだ。そして、全日本吹奏楽コンクール・中学生の部で金賞を受賞。生駒中としては、2019年から4大会連続の金賞となった。

 また、シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト全国大会ではトランペット(+フリューゲルホルン)とトロンボーンの二刀流ですさまじいソロを披露。中学校から大人のバンドまでが出場する同大会で生駒中は驚異の総合グランプリに輝き、その演奏は大きな話題になった。

 そんなココロが進学先に選んだのが岡山学芸館だった。

 ココロはずっと「こう演奏したい!」という音楽への衝動を抑えて演奏するのが苦手だった。そんなとき、生駒中とのジョイントコンサートという形で岡山学芸館に出会った。

「学芸館の人たち、なんてスカッと気持ちよさそうに演奏するんやろう! 音楽を心の底から表現してるのが素敵やなぁ」

 岡山学芸館なら自分らしく音楽を続けられそうだとココロは思った。

 幸い、岡山学芸館にはすでに生駒中の先輩が何人か入っており、女子寮もある。ココロは自分の直感に従って岡山行きを決めたのだった。

ラッパーツ

 小2で金管バンドに入ったとき、ココロはトロンボーン担当になった。トロンボーンが大好きだったが、生駒中では人数が少なかったトランペットを吹くことになった。ただ、顧問の先生には「二刀流でいこう」と言われ、トロンボーンの演奏も続けてきた。

 岡山学芸館に入るとき、先生の前でトランペットとトロンボーンの両方を吹いたが、編成のバランスの関係などでやはりトランペットパートに入ることになった。

大東こころ(1年生・トランペット)* 写真左から2番目

 岡山学芸館のトランペットパートには「ラッパーツ」という愛称がある。
 もともと天真爛漫でポジティブ思考のココロはラッパーツの仲間入りを果たし、さっそく部活に没頭する生活を送りはじめた。

「日本一のラッパセクションになろう!」

 それがラッパーツの目標だった。ココロにとって、イサムたち5人の3年生はトランペット奏者としても、人間としても、憧れの存在だった。...