吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。
第26回は東海大学菅生高等学校(東京都)#4
本連載をもとにしたオザワ部長の新刊『吹部ノート 12分間の青春』(発行:(株)日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)が大反響!
吹奏楽部員、吹奏楽部OB、部活で大会を目指している人、かつて部活に夢中になっていた人、いまなにかを頑張っている人に読んで欲しい。感涙必至です!
なんで代表に選ばれなかったんだろう
ユリンがトロンボーンのエースならば、堀江紗希(サキ)はトランペットのエース。加島先生からも「10年に1人の逸材」と評されているほどの実力者だ。また、学生指揮者として基礎練習のときには前に立って指揮をし、みんなをビシビシ鍛え上げてきた。
都大会本選では、自由曲《巨人の肩にのって》の第2楽章でユリンとともにソロを奏でた。ふたりとも1年生のときからA組で活躍し、実力を認め合う仲だ。ソロは12分間の中でも大きな聴かせどころのひとつだったが、大事な本番で完璧な演奏ができなかった。
演奏後、「すごくよかったよ」と声をかけてくれる人は多かったが、自分の実力も、本来の演奏ができなかったことも、サキ自身がいちばんよくわかっていた。
(今日できなかったところを取り返せるように、全国大会までに頑張っていこう!)
サキの頭の中では、課題を克服する方法と全国大会までの予定ができあがっていた。

ところが、代表校の発表で名前を呼ばれなかった。
その日から全国大会当日までの約1カ月、サキはずっとつらさを引きずり続けた。それは、単に負けたことが悔しかっただけではなかった。
(なんで代表に選ばれなかったんだろう? 出場順が1番だったから? ううん、朝イチでも全国に行ける力があったはず。じゃあ、私がみんなをまとめきれなかったから?)
代表になれなかった理由がわからず、サキは混乱した。
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