渡部陽一「1000枚の戦場」103~106/1000
第26回のテーマは「「NATO(北大西洋条約機構)加盟をめぐるスウェーデンとトルコの駆け引き」について。
《NATOとは?》
旧ソビエト連邦(ソ連)に対抗するために設立された米国主導の軍事同盟。
1949年の創設時点は12か国。
1991年のソ連崩壊後は東欧諸国が次々と加盟し、2020年3月時点で30か国に。
2023年4月4日には、ロシアのウクライナ侵攻を受けてフィンランドが加盟し、31か国に増えています。
スウェーデンに関してはトルコがなかなか首を縦に振らなかったため、2023年7月にトルコが承認し、加盟が確実視されています。
トルコがなぜ、スウェーデンの加盟を認めなかったのか。その経緯と駆け引きについて、渡部陽一氏が解説します。
移民に寛容な国「スウェーデン」に潜む問題
こんにちは。戦場カメラマンの渡部陽一です。
今回は北欧、スウェーデンについて触れていきたいと思います。
美しいストックホルムの街並みには、世界中から観光客が集まっています。
戦場とは地理的にも離れていて、〝戦争〟とはかけ離れている印象があると思いますが、実際、北欧の地域には「移民」という大きな問題があるのです。
特にスウェーデンは移民に対する受け入れ体制というものが非常にオープンで、中東やアフリカ方面からの移民の人たちを受け入れています。
これは移民の方々を迎え入れることによって、スウェーデンの国力を高めていきたい目的がありました。(スウェーデンの人口は約1045万人で、東京23区と同程度。面積は日本の約1.2倍)
それは移民を無条件に受け入れるだけではなく、入ってきた方々との共生を目指します。
語学の教育、仕事に就くための様々な支援、移民の家族も含めたスウェーデンで暮らしていくためのライフラインの基盤となる支援。
こうした移民に対する支援体制というものが世界の中では最も進んでいる地域と言われているんです。
しかし、この人権問題をリードするスウェーデンを揺さぶる動きがありました。
それがロシアによるウクライナ侵攻です。
このウクライナ侵攻によって、ヨーロッパ全域で、ロシアに対する国家安全保障体制を組み直していく流れが拡大しました。
なかでも、地政学的にロシアと直接向き合っている立ち位置と言えるのが、スウェーデン。
かつてのソ連時代の北欧に対する軍事侵攻が思い出されます。
こうしたロシアに対する不信感というものがあり、「ウクライナの次は、
自分たちではないのか」。
このような不安感からスウェーデン国内では、攻撃に対する危機管理というものが非常に強まっていったんです。
一筋縄にはいかなかったNATO加盟
...