「歴史ノ部屋」でしか読めない、戦国にまつわるウラ話。今回は上杉謙信について。謙信は、林泉寺の山門に『第一義』と書いた扁額を掲げさせました。今回はその原典を検出して、謙信がこの言葉を選んだ真意に迫ります。
林泉寺山門 写真/フォトライブラリー

謙信の「第一義」とは?

 上杉謙信は、春日山林泉寺(りんせんじ/上越市)に自ら「第一義」の三文字を扁額(へんがく)の裏側に大書して、山門に掲げさせた(表側は「春日山(しゅんじつさん)」)。

 今はこの扁額を再現したデザインのものが掲げられている。文字は忠実に書き写されているので、謙信の筆致を通してその精神に触れることもできる。

 この字句は現代人に、まるで謙信が「義が第一である」と唱えているような印象をもたらす。

 林泉寺山門でこの扁額を眼にする日本人の多くは、なんとなくそのように理解することだろう。

 だが、これはどこまで謙信の真意に近付いているだろうか。

原典の「第一義」

 少し歴史に細かい人は「本当の意味は、そうではない」とこれを否定的にいうことがある。...