前作『全国版』までの『信長の野望』は、名作ボードゲーム『戦国大名』と比較できるぐらいには、まだ既存のアナログゲーム作品に近いところがあり、プレイヤーの手間は増えるだろうが、『全国版』のシステムはやろうと思えば、ボードゲームに移植できそうな範囲のシステムで構築されていた。
ところが光栄は原点たる歴史ボードゲームの洋式にこだわるよりも、現行の自作品ユーザーに目を向けて、コンピュータゲームに特化する作品システムの構築に突き進むことになる。これが未来の歴史シミュレーションゲームを大きく変える転換点となった。
歴史家・乃至政彦

アナログ的基盤を越えた画期作
初代『信長の野望』(1983)や『全国版』(1986)は、名作ボードゲーム『戦国大名』(1979、エポック社)の影響を色濃く残していた。
六角形のマスで区切られた日本地図上で勢力を拡大し、乱数による戦闘解決やリソース管理を行う構造は、ルールブックとコマがあればボードゲームに移植可能な範囲に収まっていた。
たとえば、各国の「石高」や「軍事力」を数値化し、シンプルなターン制で内政と戦争を進める点は、サイコロやトークンを使ったアナログ的手法をデジタルに置き換えたものといえる。
プレイヤーの手間は増えるかもしれないが、『全国版』はやろうと思えばコンピュータゲームからアナログゲームに移植できそうな範囲の内容に留まっていたのである。
『三國志』の経験を戦国ゲームに適応
光栄がコンピュータゲームとしての独自性を追求する転機は、『三國志』(初代、1985)から訪れる。...